エネ調原子力小委が2年半ぶりに再開、「社会的信頼の回復」を議論

2018年1月17日

 総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=安井至・持続性推進機構理事長)が1月16日、2年半ぶりに開かれ、昨夏よりエネルギー基本計画見直しの検討を開始した同調査会基本政策分科会が原子力政策の最大の課題としている「社会的信頼の回復」を中心に、委員から意見を求めた(=写真)。
 冒頭、資源エネルギー庁の村瀬佳史・電力・ガス事業部長は、「原子力の信頼獲得に向け原点となるのは、福島第一原子力発電所事故の真摯な反省。原子力政策には多岐にわたる重い課題が山積しているが、これらの課題に対し一つ一つ熟議し着実に答えを出し、実現に向け取り組んでいく」と述べた。議論に先立ち、資源エネルギー庁は原子力政策の動向について説明し、社会的信頼の獲得に向けた取組を、(1)福島復興・事故収束の加速、(2)さらなる安全性の向上、(3)防災対策・事故後対応の強化、(4)核燃料サイクル・バックエンド対策、(5)状況変化に即した立地地域への対応、(6)広報・国民理解活動の強化、(7)安全を担う技術・人材・産業の維持・発展――に整理した。その中で、広報・国民理解活動として、2017年より同庁ホームページで開始したエネルギーに関する話題をわかりやすく解説する「スペシャルコンテンツ」のアクセス数は、月7万程度(12月時点)に上ったとしている。
 これに対し、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会常任顧問の辰巳菊子委員は、原子力推進に反対する国民意見も多いこととともに、福島復興や核燃料サイクルの停滞などを指摘し、「国民との間には埋め尽くすことのできない大きなズレがある」として、原子力政策の信頼獲得が極めて困難なことを主張した。
 立地地域の立場から、福井県知事の西川一誠委員は、高浜3、4号機の再稼働、「もんじゅ」や大飯1、2号機の廃炉など、県内の原子力プラントの近況に触れ、小委員会が中間整理を行った2014年12月から3年間を経て「どのくらい進んだのかしっかり議論すべき。将来を見据え確固たる方針を示す正念場に来ている」と訴えかけた。
 また、原子力資料情報室共同代表の伴英幸委員は、「国や電力が原子力の安全性について本当のことを公表していない」との意見が多数を占めているというデータを示し、「最も信頼されていない組織は経済産業省」などと強調した。
 一方、災害対策と公衆衛生に通じた東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座講師の越智小枝委員は、医療を例に、「薬も副作用がある。副作用があるという覚悟がなければ信頼は得られない」と述べ、バランスのとれた政策となるよう、地域の人たちも交えて議論することを提案した。
 各委員からの意見を受け、専門委員として出席した電気事業連合会原子力開発対策委員長の豊松秀己氏は、「安全・安定運転の実績が信頼回復のベース」などと述べた。また、資源エネルギー庁の説明では、熟練技術者の高齢化や原子力業界を志す学生数の減少に関するデータを通じ、安全を担う原子力技術・人材喪失の危機が露呈されたが、同じく専門委員として出席した原産協会理事長の高橋明男氏は、原子力発電所の長期停止により技術力が低下していくことに懸念を示した。
 資源エネルギー庁原子力政策課によると、原子力小委員会は今後、今春の取りまとめを目指すエネルギー基本計画見直しの議論には必ずしも縛られず、月1回程度のペースで会合を持つ見込みだ。