WTOパネル、韓国の日本産水産物への輸入規制に「措置の是正を求める」との報告書

2018年2月23日

 農林水産省他が2月23日に発表したところによると、韓国による日本産の水産物などの輸入規制に関し、WTO協定に基づく紛争解決小委員会(パネル)は「非整合的であり、措置の是正を求める」とする報告書を公表した。これを受け今後、韓国に対し、輸入規制措置の誠実かつ速やかな是正を求めていく。
 福島第一原子力発電所事故の直後、日本産の水産物については53か国・地域が輸入規制を行っていたが、日本は放射性物質モニタリング結果の公表など、規制緩和に向けた働きかけを継続し、完全撤廃や検査証明書の対象範囲縮小が多くの国で進んできた。一方、韓国では、2013年9月、福島県他計8県産の水産物の輸入を全面的に禁止するなど、規制措置を大幅に強化したことから、日本は二国間協議やWTO委員会における説明の他、韓国側が設立した専門家委員会の現地調査受入れなどに取り組んできた。しかしながら、韓国側から規制撤廃に向けた見通しが示されないことから、WTO協定に基づく紛争解決手続きを進め、2015年9月に設置されたパネルによる約2年半の検討を経て、このほど報告書の公表となった。
 報告書では、韓国による(1)8県産水産物の輸入禁止、(2)日本産のすべての食品に関する追加検査要求、(3)措置の不公表および情報提供の欠如――について、WTO協定に照らし「必要以上に貿易制限的」などと判断し、是正を勧告している。日韓両国による60日以内の不服申立てがなければ、パネル報告書の内容がWTOによる判断として確定する。
 菅義偉官房長官は、同日の閣議後記者会見で、今回のパネル報告書について、「日本のこれまでの主張が反映された」と評価した上で、「韓国には、WTO協定に反すると認定された輸入規制を誠実かつ速やかに是正することを求める。韓国と同様に福島第一原子力発電所事故を理由として日本産食品の輸入規制を講じている国については、撤廃・緩和を図って欲しい」との政府見解を述べた。
 日本産の水産物に対しては、韓国の他、中国、ロシア、台湾、シンガポール、マカオなどで、対象となる県の範囲は異なるが、現在も輸入停止の措置が残っており、特に、韓国においては、「魚をまったく食べなくなった人もいる」という声も聞かれるなど、水産物への風評被害が深刻な状況となっている。