総合エネ調放射性廃棄物WG、「科学的特性マップ」の理解活動について議論

2018年3月1日

 総合資源エネルギー調査会のワーキンググループは2月26日、高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定に向けた「科学的特性マップ」に関する理解活動について資源エネルギー庁他より報告を受け、今後の取組について議論した。
 「科学的特性マップ」は、科学・技術的観点から、客観的な要件・基準に基づき、安全な地層処分が成立するための地域特性を、日本地図上に4区分で示したもので、2017年7月に提示された。これを受け、資源エネルギー庁と原子力発電環境整備機構(NUMO)は10月より、全国各地で意見交換会を開始したが、学生や電力関係者に対する不適切な参加要請が判明したことから、2月下旬より公正性を徹底した対話型全国説明会に装いを改め、試行的実施に入ったところだ。
 10~12月に意見交換会は、全国の県庁所在地28都市で開催され、地層処分やマップの概要について説明する第1部と少人数グループで質疑応答を行う第2部を通じた参加者に、説明・質疑の前後で、理解度や地層処分に関する考え方などを尋ねるアンケートを行った。NUMOの説明によると、意見交換会の前後で、地層処分に対し肯定的な回答が増加していることが、アンケートの結果からみられている(=表)。マップが公表されたことに関しては、「考えるきっかけのツールとして使える。自分事と思ってもらうことが必要」など、処分地選定に向けて前進ととらえる意見の一方、「未知の活断層、地震、津波、地下水の影響が心配」といったマップに示されない地質条件や自然災害を懸念する意見もあった。
 ワーキンググループ会合で、市民との対話活動に取り組む崎田裕子委員(ジャーナリスト)は、意見交換会への参加要請を巡る不適切な事案について「大変残念」とした上で、新たな説明会を運営するNUMOに対しトラブル発生に備えたリスク管理を求めるとともに、「『地域に入ってしっかり議論する』ということをもう一度見直して欲しい」などと訴えかけた。さらに、寿楽浩太委員(東京電機大学工学部准教授)も、これまでの意見交換会で、学生らへの謝金支払いを約束して参加要請が行われたことに関し、「正当な対価が支払われなければ社会通念上却って不適切となることもある。(今後の参加者募集に当たって謝金の提供を禁止する)ルールが独り歩きしないように。また、理解活動を行えば前進という思い込みがないか」などと指摘した。
 また、マップ作成の技術的検討をリードした杤山修委員(原子力安全研究協会顧問)は、「廃棄物の押し付け合いでは永遠に解決できない。受け入れることを誇りに思ってもらえるような将来像を」と、吉田英一委員(名古屋大学博物館教授)は、地域の女性を対象とした説明会に関わった経験から、「一通りの型にハマった情報を流されている。マップを渡されても『どうすればよいのか』」という感触を得たことなどをそれぞれ述べた。
 委員からの意見を踏まえ、資源エネルギー庁の村瀬佳史・電力・ガス事業部長は、「信頼を回復するのは大変険しい。地域の方々の関心を踏まえキメ細やかに進めねばならない」として、今後の理解活動に向けさらに改善を図っていく姿勢を示した。
 地層処分の理解活動を巡る問題に関して、世耕弘成経済産業相は、翌27日の閣議後記者会見で、「人数をたくさん集めて、あたかも盛大だったように見せること自体間違いだと思う。『なぜ十分に説明会の情報が行き渡らないのか』ということをNUMO自身がしっかり考えるべき」などと、地道に進めていく必要性を強調した。