福島第一・増田プレジデント、陸側遮水壁の奏功「延べ約34万人もの力でなしえた」

 東京電力は3月1日、福島第一原子力発電所廃止措置の進捗状況を公表した。これに伴い同社福島第一廃炉推進カンパニープレジデントの増田尚宏氏は、福島県内で行われた月例記者会見で、汚染水対策のカギとなる陸側遮水壁の効果、使用済み燃料取り出しに向けた3号機燃料取り出しカバーの設置完了、同じく1号機がれき撤去を最近1か月間のトピックスとしてあげた。陸側遮水壁は、汚染源に水を「近づけない」ための重層的対策の一つとして、1~4号機を取り囲み全長約1,500mの凍土壁を形成し、汚染水が滞留する原子炉建屋内への地下水流入量を低減させることで、汚染水の増加を抑制するものだ。東京電力の発表によると、汚染水発生量は、渇水期の参考データではあるものの、2017年12月~2018年2月の平均で140立方m/日まで減少しており、福島第一廃止措置の中長期ロードマップで目標とする「2020年内に150立方m/日に抑制」を既に下回っていることが確認されている。
 同日の会見で、陸側遮水壁について、現在ほぼすべての範囲で地中温度が0度Cを下回るとともに、山側において4~5mの内外水位差が形成されていることから、「深部の一部を除き完成している」との造成状況が説明された。増田氏は、2014年3月の試験的凍結開始からの4年間を振り返り、「決して容易ではなかった。他作業との兼ね合いから作業はほとんど夜間に行われた。これも鹿島を始め協力企業の方々延べ約34万人もの力があってなしえたもの」と、謝意を述べたほか、今後も地元の方々に与える不安感をなくすよう、「一層の汚染水発生量の低減に努めていく」などと使命感を示した。
 また、3号機燃料取り出し用カバー設置工事は、原子炉建屋上部を覆うようにドーム屋根8体をつなげ合わせるもので、2017年1月の着手から、7月のドーム屋根設置開始、11月の燃料取扱機設置などを経て、2月23日に最後のドーム屋根が据え付けられた(=写真、©東京電力)。今後は、電源ケーブル敷設などの作業を進め、2018年中頃の燃料取り出しに向けて、燃料取扱機の試運転を行い、操作技量の向上に努めていく。増田氏は、既に燃料取り出しを完了した4号機と異なり、3号機での作業がカメラを用いた遠隔操作となることを強調し、「非常に慎重にやらねばならない」などと、困難に立ち向かう姿勢を示した。3号機では、今後の廃炉作業に資するべく、2月27日に線量計とカメラを搭載したドローンによる原子炉建屋2・3階の調査が実施されている。
 東京電力ホールディングスが2月27日に発表した4月1日付の人事異動で、増田氏は副社長に就任することとなり、これに伴い、福島第一廃炉推進カンパニープレジデントの後任として、福島第一原子力発電所長の経験のある小野明氏が就任する。増田氏は、2014年4月に設置された福島第一廃炉推進カンパニーの初代プレジデントとして、廃炉・汚染水対策の各取組を精力的にリードし、毎月の中長期ロードマップの進捗状況会見に臨みスポークスマンの役割も果たしている。同氏は3月1日の会見で、「残りの1か月間廃炉を一歩でも進めていくよう、気を緩めずに最後まで任務を全うしていく」などと述べた。