総合エネ調原子力小委、原燃や電工会を招き核燃料サイクルや技術・人材で議論

2018年3月7日

 総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=安井至・持続性推進機構理事長)は3月6日、核燃料サイクル・バックエンド対策と技術・人材について、日本原燃社長の工藤健二氏、日本電機工業会原子力政策委員長の武原秀俊氏(日立製作所原子力ビジネスユニットCOO)らを招き議論した。

原子力発電所の廃止措置計画(このほか関西電力大飯1・2号機も廃炉が決定している。資源エネルギー庁発表資料より引用)

 核燃料サイクルの取組状況について、資源エネルギー庁は、(1)安全最優先での推進、(2)プルトニウム・バランスの確保、(3)使用済み燃料対策――に整理したほか、原子力発電所の運転に伴う高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた理解活動や研究開発、廃炉の現状や今後の課題などを説明した。また、核燃料サイクルを推進する事業者として、工藤社長は、青森県六ヶ所村にそれぞれ2021年度上期、2022年度上期のしゅん工を目指し建設中の再処理工場とMOX燃料工場の現状について述べた。運転に必要な新規制基準への適合性審査は、トラブル発生に伴い中断しているが、現在、全社をあげての現場改善活動に取り組んでおり、今後、自ら改善が進んだと判断した時点で、原子力規制委員会に審査の再開を申し出るとしている。
 これに対し、西川一誠委員(福井県知事)の代理で出席した藤田穣・同副知事は、多くの原子力施設を立地する福井県の現状として、商業用原子力発電プラント5基と「もんじゅ」の廃炉、運転期間の延長、使用済み燃料対策などが「同時に進行している」ことをあげ、これらを踏まえた施策が検討されるよう訴えた。
 事業者の立場からは、豊松秀己専門委員(電気事業連合会原子力開発対策委員長)が、日本原燃への支援、使用済み燃料対策とともに、プルサーマル発電について、再稼働したプラントでは3基を数え、九州電力玄海3号機もMOX燃料を装荷したことをあげたほか、新規制基準審査が途上の4基(北海道電力泊3号機、中部電力浜岡4号機、中国電力島根2号機、電源開発大間)も早期に稼働するよう着実に取り組んでいく姿勢を示した。
 核燃料サイクルや廃炉の着実な実施、原子力の安全性向上など、直面する課題の解決に向け、資源エネルギー庁は、(1)原子力人材の減少、(2)研究開発機能の低下、(3)サプライチェーンの劣化、(4)核不拡散・原子力安全における期待の高まり――を技術・人材に関する問題意識としてあげ、研究開発基盤の維持を巡る課題については、文部科学省が作業部会での検討状況を説明した。人材育成と研究開発の一体的な推進に向けては、産官学の取組として、原産協会理事長の高橋明男専門委員が「人材育成ネットワーク」の機能強化・拡充を披露した。
 原子力技術の現場について、武原氏は、福島第一原子力発電所事故後、学生就職希望者とともに、再稼働・新設が進まず高齢化により建設経験者も減少している状況を、2012年度から2015年度におけるプラントメーカー3社の人員推移から示した。それによると、3年間で、全体で約1割減少、20代後半が大幅に減少して30代前半と逆転し、40代前半のプラント建設経験者が半数を下回ったことなどから、「技術の伝承が困難に」、「2025年にはプラント建設経験者の多くが退職する」という危機的状況が表れている。
 委員からは、「『廃炉』となるとやはり希望が持てない。若い人たちを惹きつけるには原子力の未来にワクワクするものが必要」、「研究施設の老朽化は喫緊の課題」、「日本が培ってきた技術・人材は一度失われると取り戻すことができない」といった声があった。
 また、前回会合に引き続き、安全性に優れた中小型炉の開発推進を求める意見もあり、資源エネルギー庁や文科省で技術・人材関連の有識者会議をリードしている山口彰委員(東京大学大学院工学系研究科教授)は、「正に新しい概念」と歓迎し、これに特化した施策を検討する必要性を強調した。