エネ情勢懇談会、2050年シナリオに向け論点整理

2018年4月2日

 資源エネルギー庁の有識者会議「エネルギー情勢懇談会」は3月30日、2050年を見据えたエネルギーシナリオに関する論点を整理し議論した。昨夏より、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会によるエネルギー基本計画見直しの議論と並行し、海外有識者からのヒアリングなどを通じ、温室効果ガス排出削減の国際枠組み「パリ協定」に掲げる目標「2050年80%削減」への対応を始め、長期的なエネルギーの将来像について検討を進めてきたもの。
 2050年シナリオの設計に向けては、(1)不確実性、(2)先行する主要国情勢から得られる教訓、(3)わが国固有のエネルギー環境――を踏まえ、あらゆる技術的選択肢の可能性追求を基本とする「野心的な複線シナリオ」を採り入れることなどがあげられている。原子力については、「実用段階にある脱炭素化の選択肢」として、(1)安全を最優先に、(2)再生可能エネルギー拡大を図る中で「依存度を可能な限り低減」との方針を堅持――することとされた。
 これを受け、基本政策分科会をリードする坂根正弘委員(小松製作所相談役)は、「石油は2070年頃に、ガスも100年後にはなくなり、その頃世界の人口は100億人を超える」などと警鐘を鳴らし、可能な限りの化石燃料の温存と、再生可能エネルギーの技術革新を訴え、「これでやっていける確証があるならば自身は(原子力に)反対」として、当面は原子力利用が必要なことを示唆した。
 さらに、中西宏明委員(日立製作所会長)も、原子力利用の方向性について、「『可能な限り低減』という宣言は可能性を潰してしまう」として、大衆による「好き・嫌い」に惑わされず現実的な議論がなされることを求めた。
 また、山崎直子委員(宇宙飛行士)は、原子力技術について、「バックエンド問題が解決されていないことから、現時点で持続可能とはいえない」と指摘し、さらなる技術革新の必要性を訴えたほか、核融合のプラズマ閉じ込めや省エネ技術など、日本の優位性をさらに引き伸ばし海外展開していくことを提案した。
 一方で、福島第一原子力発電所事故に関する「民間事故調」を立ち上げた船橋洋一委員(アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長)は、日本では技術の問題以前に、「リスク管理のガバナンス」、「安全文化の浸透」、「規制の効果」、「セキュリティ」が、同じ原子力国のフランスと比較し立ち遅れていることをあげ、「原子力はミニマムにシフトすべき」などと主張した。
 資源エネルギー庁によると、今回の議論について再度整理した上、今春中の「エネルギー情勢懇談会」としての提言取りまとめに向けて、次回以降最終案を示す運びだ。