【第51回原産年次大会】今井会長、「再生可能エネルギーと原子力の共存」と
「第51回原産年次大会」が4月9日、「原子力が未来を担うエネルギーたり得るには」をテーマに都市センターホテル(東京・千代田区)で開幕した。10日までの2日間、「エネルギー政策」、「福島第一原子力発電所と復興の現状」、「海外展開」、「原子力におけるイノベーション」について議論が行われる。
また、エネルギー政策について、今井会長は、海に囲まれたわが国において再生可能エネルギーの拡大を図るには、短期間での設備や制度の整備が困難などと指摘し、「地球環境問題と向き合いながら安くて安定的な電力を使っていくため、“再生可能エネルギーと原子力の共存”が不可欠である」とした。その上で、「2050年までにCO2を80%削減するには、原子力発電所の新増設が欠かせない」と強調した。一方で、原子力発電プラントの現状について、新規制基準をクリアして再稼働に至ったのはわずか7基に過ぎず、長期停止に伴う火力発電のたき増しから、多量のCO2排出だけでなく、燃料費増による国民負担にもつながっていることも懸念した。
さらに、海外の現状について、今井会長は、中国やロシアなどで原子力発電所の新増設が積極的に進められ、「世界の原子力発電所の設備容量は合計で4億900万kWと、3年連続で過去最高を更新した」ことをあげた。
今井会長は、今回大会のテーマに掲げる「原子力が未来を担う」ためには、「何よりも生きた現場が必要」、「新しい技術の導入によって原子力技術を魅力的なものに」などと強調し、2日間の議論を通じ「実りある大会になること」を期待した。
来賓挨拶に立った平木大作・経済産業大臣政務官は、「福島の復興と福島第一原子力発電所の大量汚染水対策は経産省の最重要テーマ」とした上で、現在総合資源エネルギー調査会で議論している「原子力に対する社会的信頼の回復」を始め、原子力の安全を支える技術・人材確保などを巡る諸課題について述べた。
続いて、OECD/NEA事務局長のウィリアム・マグウッド氏と米国核物理学者のテイラー・ウィルソン氏が講演を行った。
マグウッド氏は、「原子力エネルギー:複雑な未来をナビゲートする」をテーマに発表した。その中で、同氏は、世界のCO2排出の6割がエネルギー関連で占められ、発電電力量の4分の3が化石燃料に依存している現状において、「CO2をどう減らすのか、エネルギーをどう使うのか」が課題だとし、主要国の動向を示した。それによると、2015年のCOP21で採択された国際枠組み「パリ協定」で、「世界の気温上昇を2度C未満に抑えるための方策を開発することに195か国が合意している」として、温室効果ガス削減に対する世界的が関心の高まりが述べられた。
さらに、マグウッド氏は、IEAが掲げる「地球温暖化を2度C未満に抑制するシナリオ」を紹介し、「経済的にもCOP21のゴールを満たすには、再生可能エネルギーも原子力もすべてが必要」とした上で、原子力の設備投資は膨大ではあるが、長期的な電力供給源としてはコスト競争力が高いことを強調した。また、同氏は、「第4世代原子力システム国際フォーラム」(GIF)の取組やOECD/NEAがイノベーション創出を目的に策定した「原子力イノベーション2050」についても紹介した。
「核融合で遊んだ少年」として知られる米国核物理学者で、気鋭の起業家であるテイラー・ウィルソン氏は、14歳で核融合に成功した自身の功績について語った。「再生可能エネルギーでも、データ解析を重ね、繰り返しの研究開発が行われてきた。10年単位ではなく月単位で行えれば、原子力を含めあらゆる分野の研究開発のスピードが上がる」とウィルソン氏は強調した。現在、同氏は、放射線のバイオや材料開発の分野での応用研究や、新たに手がけた原子炉「モジュラー型受動的安全原子力電池」の基本設計や開発に取り組んでいることを披露した。