フィンランドと最終処分について考える共同セミナー開催、「日々の行いが国民の信頼に」
資源エネルギー庁と原子力発電環境整備機構(NUMO)は4月12日、フィンランドの政府機関他と共同で、放射性廃棄物の問題について考えるセミナーを都内で開催し、最終処分地選定に向けた理解活動のあり方を中心にパネル討論などが行われた。
フィンランドでは使用済み燃料を直接処分する方針としているが、既に世界に先んじて2001年に処分地(オルキルオト)が決定しており、現在、2020年代始めの操業開始を目指し処分場の建設が進められている。一方、日本では、使用済み燃料を再処理して発生する高レベル放射性廃棄物の地層処分に向けて、2017年7月に地域の科学的特性を客観的に色分けした「科学的特性マップ」を提示し、国民の関心を喚起している段階にある。放射性廃棄物最終処分に関するフィンランドとの協力を巡る動きとしては、昨夏に世耕弘成経済産業相が同国を訪れ、建設中の最終処分施設を視察するとともに、関係閣僚や立地自治体・議会、地域住民との意見交換を行うなどした。世耕経産相は帰国後、「フィンランドの経験にも学びながら、一歩ずつ着実に取り組んでいきたい」と述べている。
セミナーでは、フィンランド大使館参事官のテッポ・トゥルッキ氏が、自国のエネルギー政策について説明した。現在、4基の原子力発電プラントが運転中、1基が建設中のほか、新設計画もあり、チェルノブイリ事故後は原子力反対の国民世論も高まったが、1990年代以降、「技術が国民からの信頼を得た」ことで進められてきたとしている。
その他、フィンランドからは、ポシバ・ソリューションズ代表取締役社長のミカ・ポホヨネン氏、放射線・原子力安全センター(STUK)のユッシ・ヘイノネン氏、雇用経済産業省エネルギー課副課長のリーサ・ヘイキンヘイモ氏らが登壇し、放射性廃棄物最終処分に関するそれぞれの取組について説明した。
国際環境経済研究所理事の竹内純子氏の進行によるパネル討論では、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会常任顧問の辰巳菊子氏、原子力資料情報室共同代表の伴英幸氏らが、フィンランドにおける処分地選定までの理解活動の方策について尋ねた。原子力利用に慎重な姿勢をとる伴氏が、原子力発電所を立地する自治体であるオルキルオトが最終処分施設を受け入れた経緯について問うと、フィンランド側は「事業者との信頼関係が基盤にある」、「将来の税収増の可能性が期待されている」などと応えた。
また、辰巳氏が「これまで電気のライフサイクルについてほとんど知らされてこなかった」とし、伴氏が事故を受け「原子力からの撤退」を求める世論の高まりを指摘したのに対し、ヘイノネン氏は、「すべては信頼から」とした上で、規制当局としても自治体の他、政治家やメディアとの対話に努めていることを強調した。竹内氏は「まず消費者側にも『知る努力』、『考える努力』が必要」として討論を締めくくった。
セミナー終了に際し、ユッカ・シウコサーリ駐日フィンランド大使が登壇し、改めて「日々の行いが国民の信頼につながる」とした上で、「フィンランドで優れているのは計画性。同じく計画性に優れた日本で解決できないことはない」と、今後の取組に期待を寄せた。