規制委が原子力災害医療体制の見直しへ、研修・訓練の体系化も

2018年4月18日

 原子力規制委員会は4月18日の定例会合で、原子力災害発生時には専門的医療を、平時には研修・訓練を実施する「原子力災害拠点病院」などの体制について見直しを行うこととした。
 原子力災害発生時には、被ばく医療に加え、一般的な救急医療や災害医療も必要となることから、高度専門的な診療の行える医療機関を予め指定し、地域医療機関との連携体制を事前に構築しておくことが重要となる。そのため、規制委員会では2015年にこうした医療施設の位置付けを整理し備えるべき要件を取りまとめた上で、原子力災害対策指針に明記した。指定する施設は、診療機能などにより、「原子力災害拠点病院」の他、「高度被ばく医療支援センター」、「原子力災害医療・総合支援センター」、「原子力災害医療協力機関」に分けられている。そのうち、国が指定する「高度被ばく医療支援センター」は、地域病院では対応の困難な被ばく患者の受入れや、高度専門的な研修・訓練などを主な役割としており、量子科学技術研究開発機構の放射線医学総合研究所の他、全国をカバーすべく弘前大学、福島県立医科大学、広島大学、長崎大学の4か所が「原子力災害医療・総合支援センター」と合わせて指定されている。これらの指定施設は、要件を満たしているか3年ごとに確認が行われる。

原子力災害医療に関する研修の種類(原子力規制委員会資料より引用)

 今回の見直しでは、被ばく医療体制を継続的に強化していくため、5か所の「高度被ばく医療支援センター」の中で、中心的・指導的役割を持つ「基幹高度被ばく医療支援センター」が新たに置かれることとなり、放射線医学総合研究所が指定される見通しだ。また、「研修内容に重複がある」、「再教育や技能維持の仕組みがない」といった課題を踏まえ、標準テキストの作成、受講歴の管理など、研修の体系化を図ることとしている。

弘前大学の被ばく医療研修室を視察する伴委員ⓒ原子力規制委員会

 「原子力災害医療・総合支援センター」の指定要件の確認に向けて、昨秋、現地視察を順次行った伴信彦委員は、訪問を終えた弘前大学で記者団の取材に応じ、「放射線分野で幅広い専門家がそろい、被ばく医療に以前から精力的に取り組んでおり心強さを感じた」と評価を述べた。一方で、視察を通じて、「原子力災害医療の教育については始まったばかりで、規制委としてもまだ手探りの状況。どういったリソースを投入できるか長い目で考えていく必要がある」などと、今後の人材育成に関する課題をあげている。伴委員は、18日の会合でも、「総合的に底上げしていくにはリーダーシップが必要」と述べ、研修・訓練をより体系化していく重要性を強調した。