新たなエネルギー基本計画案、2050年に向けエネ調委員からは様々な意見

2018年5月17日

 既報の通り、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=坂根正弘・小松製作所相談役)は、5月16日に行われた会合で、新たなエネルギー基本計画の素案を取りまとめた。今後、パブリックコメントに付され、今夏にも4年ぶりとなるエネルギー基本計画の閣議決定となる見通しだ。
 今回のエネルギー基本計画案は、「計画の骨格を変える段階にはない」(2017年8月会合での世耕弘成経済産業相発言)との考えから、2014年策定の現行計画を踏まえた2030年エネルギーミックスの「確実な実現を目指す」こととされ、さらに、長期的な地球温暖化問題などの視点から、2050年を見据えたシナリオ設計を組み合わせた構成となっている。
 原子力に関しては、2030年に向けた基本的方針の中で、「長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と、現行計画の記述に「長期的な」を追加した位置付けとなった。さらに、2050年シナリオの設計では、「実用段階にある脱炭素化の選択肢」として、人材・技術・産業基盤の強化に直ちに着手し、安全性・経済性・機動性に優れた炉の追求、バックエンド問題の解決に向けた技術開発を進めていくとされている。16日の会合で、2050年のエネルギー戦略に関する検討を行う「エネルギー情勢懇談会」にも参画した坂根分科会長は、安全性に優れた小型炉として「SMRの開発を急ぐべき」などと主張した。
 不確実性や不透明性が伴う2050年に向けては、エネルギー選択肢の開発目標や相対的重点度合いを柔軟に修正・決定していく「科学的レビューメカニズム」の構築や、理解活動のあり方など、委員から様々な意見があった。幾つか紹介する。
 橘川武郎氏(東京理科大学イノベーション研究科教授) 原子力発電は、既存炉の運転期間を60年まで延長するだけでは急速に規模が縮小していくことから、リプレースも行わなければ「脱炭素化の選択肢」にならない。依存度低減の議論とは必ずしも矛盾しない。
 工藤禎子氏(三井住友銀行常務執行役員) エネルギーは長期的な投資が必要なので、速やかにかつ継続的に取り組む必要がある。技術自給率の向上には、研究開発費の投資など、官民連携の複合的な施策が必要だ。
 武田洋子氏(三菱総合研究所政策・経済研究センター長) 世界の情勢変化のスピードにどう対応していくか、今後も年1回程度のフォローアップが必要ではないか。
 辰巳菊子氏(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会常任顧問) 案文は文字ばかりで読みづらい印象を受ける。できるだけ多くの人に読んでもらえるよう、「コミュニケーションの入り口」として是非工夫してもらいたい。
 増田寛也氏(野村総合研究所顧問) 「科学的レビューメカニズム」は、客観的な情報に基づくものとなるよう、仕組みをキチッと考えていく必要がある。
 水本伸子氏(IHI常務執行役員) 2050年となると、会場内の人たちの大半はもう現役ではなくなる。今の子供たちにエネルギーがどれほど重要かを伝えていくよう、教育についても強化していく必要がある。
 山口彰氏(東京大学大学院工学系研究科教授) イノベーション(技術革新)とレギュレーション(規制)は密接に結び付いている。立地問題は原子力に限らず非常に重要だ。