原産協会理事長、高温ガス炉開発を通じた日本技術の国際展開や人材確保に強い期待

2018年5月25日

高温ガス炉熱利用システムのイメージ(原子力機構発表資料より引用)

 原産協会の高橋明男理事長は5月24日、月例のプレスブリーフィングを行い、23日に発表したメッセージ「高温ガス炉の実用化に向けた取り組みへの期待」について説明し、記者団からの質疑に応えるなどした。高温ガス炉は、日本原子力研究開発機構が「HTTR」(大洗町)を用いて、安全性実証試験を重ね熱利用の研究開発を進めているが、現在、原子力規制委員会による新規制基準適合性審査のため停止中だ。今回のメッセージでは、「HTTR」の早期運転再開を望み、「国産技術を使った新型炉の実用化」への挑戦に弾みがつくことに期待を寄せている。
 これに対し、記者から、総合資源エネルギー調査会での議論を振り返り、高温ガス炉の実用化に向けた困難を指摘されると、高橋理事長は、事故の経験から、軽水炉と異なった固有の安全特性への関心を述べた上で、ポーランドにおける熱利用で日本の技術を活かすなど、その意義を強調した。高温ガス炉の安全特性としては、「冷却材に不活性なヘリウムを使用しており水素爆発が発生しない」、「燃料の被覆に耐熱性に優れたセラミックを使用しており、燃料が溶融しない」ことなどがあげられている。
 このほど取りまとめられた新たなエネルギー基本計画の素案によると、高温ガス炉については、「水素製造を含めた多様な産業利用が見込まれ、固有の安全性を有する」技術課題として、海外市場の動向を見据えつつ、国際協力の下で推進していくとされている。
 また、人材確保の関連で、原子力専攻以外の学生に対する喚起について質問があったのに対し、高橋理事長は、「原子力の価値やそこで働くやりがいについて、若い人たちに訴えていく」と、その重要性を強調し、高温ガス炉もその一つであることを改めて述べた。
 さらに、原子力技術の維持に関する質問に対し、高橋理事長は、国内の大型鍛鋼材メーカーの近年の受注実績に言及しながら、「20年間ものを作らないと技術は低下する。『作る技術』は実際に作らなければ維持できない」などと強く懸念し、海外プロジェクトでの日本の技術力発揮に期待を寄せた。