国会事故調元委員長の黒川氏が更田規制委員長と意見交換

2018年7月10日

意見交換を行う黒川氏(左から2人目)と更田委員長(右から2人目)

 国会による福島原子力発電所事故調査委員会で委員長を務めた黒川清氏(政策研究大学院大学名誉教授)は7月9日、原子力規制委員会を訪れ更田豊志委員長と意見交換を行った。意見交換の模様は規制委員会のウェブサイトで配信されている。
 国会事故調は、福島第一原子力発電所事故の原因究明に向けた調査・提言を行うため、2011年12月に憲政史上初めて国会に設置された調査機関で、ヒアリング、現地視察、タウンミーティングなどを行い、2012年7月に報告書を取りまとめ衆参両院議長に提出した。報告書では、規制組織の抜本的見直しを提言しており、備えるべき要件として、(1)高い独立性、(2)透明性、(3)専門能力と職務への責任感、(4)一元化、(5)自律性――をあげている。
 黒川氏は、国際社会から見た日本の組織文化の現状を切り口に、発足から間もなく6年を迎える規制委員会の独立性や透明性を評価した。また、米国科学アカデミーでの講演経験から、日本でよく使われる「アカウンタビリティ」という言葉が「リスポンシビリティ・トゥ・エクスプレイン(説明責任)」とされているのは、「ロスト・イン・トランスレイション(誤訳)だ」とし、「与えられた責務を遂行すること」であるべきとも指摘した。さらに、国際性の面から、同氏は、規制に係る人材育成の拡充に向け、「是非若い人たちを海外に送るように」と繰り返し強調した。これに対し、更田委員長は、海外での人材育成について、「言語の違いを乗り越える困難」の一方、「異質なものに触れる意義」との認識を示した上、一連の意見を「応援」として受け止めるとした。
 意見交換後、記者団の取材に応じた黒川氏は、今回更田委員長に最も伝えたかったことについて問われると、「『頑張れ』ということだ」と力を込めた。また、福島第一の汚染水処理で発生するいわゆるトリチウム水を扱う上での理解に関し、メディアによる情報発信の役割に期待を寄せた。