東工大と量研機構、産学協創ラボで研究開発の産業応用を推進
東京工業大学と量子科学技術研究開発機構は7月12日、包括連携協定を締結した。本協定のもと8月、東工大大岡山キャンパス(東京・目黒区)内に、「QST量子機能材料産学協創目黒ラボ」を開設し、両者合わせて30名の研究者を集結させ、医療や社会インフラなど、様々な応用が期待される固体量子センサの研究を加速する環境を構築していく。協定締結に際し同日、記者発表に臨んだ量研機構の平野俊夫理事長は、「大学や産業界とも連携を密にして、わが国のインフラが最大限に活用されるように」と期待を寄せた。また、これまでも学際的取組に積極的姿勢を示してきた平野理事長は、サメの鋭い嗅覚や光合成のメカニズムなどを例に、「分子生命科学にはまだわからないことが多く残されている」と述べ、今回開設する産学協創ラボを契機として、さらなる学術領域の開拓に挑戦していく意欲を見せた。
また、東工大で産学協創ラボをリードする同学工学院(電気電子系)の波多野睦子教授は、「この1年で量子センサに関心を示す企業が急激に増えてきた」と、自身の研究の将来性を強調する一方で、「『企業の若い人が学生から教わる』という逆の場面も出てきた」とも述べ、産業界からの参集にも大いに期待を寄せた。
波多野教授が取り組む固体量子センサは、ダイヤモンドに発現する特異な物性を応用したもので、例えば、医療分野では、がん手術時における転移検出に用いることで、治療の大幅な低侵襲化も可能になる。他分野にも期待がかかるが、連携協定の締結により、量研機構が高崎量子応用研究所に有する大出力の電子線加速器を活用することも考えられ、両者のリソースを融合し、材料創製から産業応用に至る一貫した総合的研究開発に拍車がかかりそうだ。