エネ庁、福島第一・トリチウム水の処理に向け説明・公聴会開催へ

2018年7月17日

 福島第一原子力発電所の汚染水を浄化処理した後に残るいわゆるトリチウム水の処理について検討する資源エネルギー庁の小委員会は7月13日、8月末の説明・公聴会開催に向け議論した。
 処理水のタンク貯蔵量は、約105万立方m(2018年3月時点)に上っており、現状137万立方mまでのタンク建設計画があるが、建設に適した用地は限界に達しつつある。加えて、廃炉を進捗させ、発電所全体のリスクを低減するためには、(1)燃料デブリの取り出しの作業エリア、(2)使用済み燃料(約1万本)を保管する乾式キャスクの設置場所――などのエリアを新たに確保しなければならない。
 一方、トリチウム水の処理については、同じく資源エネルギー庁の専門家タスクフォースで、(1)地層注入、(2)海洋放出、(3)水蒸気放出、(4)水素放出、(5)地下埋設――の5つの処分方法について、規制上の成立性や技術面での評価がなされた。それによると、海洋放出と水蒸気放出については、規制基準が存在し国内外で放出の実績があるが、地層注入については、適用される既存の基準がなく、長期モニタリングの方法も確立されていない。また、水素放出については、前処理やスケールアップに向けた研究開発が必要となるほか、地下埋設も、将来にわたるモニタリングや新たな規制基準を検討する必要性が考えられるという。
 13日の小委員会では、今後の検討に向けて広く意見を求めるべく、福島県富岡町(8月30日)、同郡山市(8月31日)、都内(8月31日)で説明・公聴会を開催することとしており、技術的観点に加え、風評被害などの社会的影響も含め取りまとめた説明資料案を提示し議論した。委員からは、拙速なトリチウム水の処理が事故の風化につながるという懸念や、最近の近畿大学の研究成果を例に新たな技術適用への期待の声もあった。
 また、オブザーバーとして出席した福島県危機管理部原子力安全対策課長の菅野崇氏は、「トリチウム水についてはとりわけ県民の関心が高い。環境影響や風評対策など、一つ一つ丁寧に説明して欲しい」と訴えた。