福島第一トリチウム水の取扱いに向け説明・公聴会が富岡町で始まる、31日に都内でも開催

 福島第一原子力発電所の汚染水を浄化処理した後に残るいわゆるトリチウム水の取扱いに関する説明・公聴会が8月30日、福島県富岡町で始まった。資源エネルギー庁の有識者小委員会が開催。多核種除去設備(ALPS)で取り除けないトリチウムを含んだ処理水を貯蔵するタンクが増加することで、今後の廃炉作業への影響が懸念されており、地元の産品や観光業に与える風評被害など、社会的影響も含め総合的な検討を行うべく、広く国民の意見を求めるもの。31日には福島県郡山市と都内でも行われる。
 トリチウム水の処分方法としては、(1)地層注入、(2)海洋放出、(3)水蒸気放出、(4)水素放出、(5)地下埋設――について、生活圏への科学的影響が生じないことを前提に、安全性、技術的成立性、コストなど、小委員会の専門家タスクフォースで技術的評価が行われてきた。同委の説明資料によると、そのうちの海洋放出と水蒸気放出については、規制基準が存在し、国内外で実績があり、処分費用では、海洋放出が17~34億円、水蒸気放出が227~349億円となっている。
 説明・公聴会では、公募により選ばれた14名が意見を表明した。その中で、福島県漁業協同組合連合会の野﨑哲氏からは「試験操業の規模拡大に取り組んでいるこのタイミングでALPS処理水の海洋放出は、福島県の漁業に壊滅的打撃を与えることは必至」と、試験操業に携わる漁師からも「折角試験操業を積み上げてきたのに、放出によりなし崩しにされ、本格的な操業が何年も遅れてしまう」と、海洋放出に反論の声があがった。

福島第一原子力発電所構内に立ち並ぶタンク群

 一方で、技術的観点から福島第一の現状を見て、「タンクの多さを感じる。このままの状態を続けることはできない」とした上で、風評被害の懸念を踏まえ「しっかりと放出を管理すべき」などと、海洋放出を容認する意見もあった。
 また、トリチウムの分離技術について、小委員会の専門家タスクフォースでは「直ちに実用化できる段階にあるものは確認されていない」としているが、意見表明者からは、最近の近畿大学による関連の研究成果に触れながら「今後とも見定める必要がある」として、タンク保管に検討の余地を求める声もあった。
 この他、昨今の原子力関連行事における電力会社や学生の動員問題への言及や、「再度仕切り直しを」などといった説明・公聴会の設定に関し強い不信感を呈する声もあり、資源エネルギー庁では、「まだまだ工夫が必要。丁寧に説明していきたい」と応えている。さらに、福島沿岸で水揚げされる「常磐物」の壊滅を危ぶみ、「双方向型の公開討論会を、幾度も積み上げて決めるべき問題」という指摘もあり、小委員会のメンバーで市民との対話活動に取り組む崎田裕子氏(ジャーナリスト)は、「漁業関係者にとって納得のいく情報提供・対話の方法はないものか」などと述べている。