東京電力「原子力改革監視委員会」、クライン委員長がコミュニケーションの重要性を強調

2018年10月9日

記者会見に臨む、ジャッジ副委員長、クライン委員長、櫻井正史委員、鈴木一弘事務局長(左より、東京電力本社にて)

 東京電力の諮問機関「原子力改革監視委員会」は10月5日、同社による自己評価について報告を受け議論した。同委は、東京電力が進める原子力改革の取組について、外部の視点から監視・支援を行うため2012年9月に設置されたもので、元米国原子力規制委員会(NRC)委員長のデール・クライン氏が委員長を務めている。
 今回の委員会会合で、東京電力は、原子力安全改革における重点課題である「組織・ガバナンスの強化」、「人財育成の強化」、「コミュニケーションの改善」、「原子力安全文化の醸成」、「内部監視機能の向上」に対する自己評価結果を報告した。自己評価は、取組の定着と効果の面から5段階で示される。そのうち、「人財育成の強化」については、エンジニアリング力が「定着していない」(下から2番目の評定)ことから、今後、育成プログラムの構築などに取り組むとしている。また、「人財育成の強化」でSAT(*)に基づく教育訓練プログラムの再構築、およびその他の4つの重点課題については、「定着し、効果ありの可能性」(上から2番目の評定)との評価だった。
 会合終了後の記者会見で、クライン委員長は、原子力規制委員会から指摘された防災訓練での情報伝達に関する議論を振り返り、「効果的かつタイムリーなコミュニケーションができているか、引き続き監視していきたい」と述べた。さらに、副委員長のバーバラ・ジャッジ氏(英国原子力公社名誉会長)も、コミュニケーションの有効性は、「一般の人が受け止めた情報を理解でき、それを子供に説明できるか」が物差しとなることを強調した。
 「原子力安全文化の醸成」に関する東京電力の自己評価では、安全についての社内議論の増加、安全性向上策提案制度の件数増加など、効果を認めているが、ジャッジ副委員長は、「トップからのコミットがさらに必要」と指摘しつつ、今後の展開に期待を寄せた。
 福島第一原子力発電所の現状に関し、クライン委員長は、機材の不具合が続く3号機使用済み燃料取り出しについて「スピードを重視することなく、作業を安全に行うこと」と、工程ありきではなく安全最優先で取り組む重要性を強調した。また、トリチウム水処理を巡る風評被害の問題については、「漁業関係者ともきちんとコミュニケーションを図り、理解してもらうことが重要」などと語った。

*Systematic Approach to Training 国際的な良好事例とされている体系的な教育訓練アプローチ