原子力国民会議全国大会始まる、立地地域の声を反映すべく議論

2018年11月1日

 「原子力の安全と利用の促進」を掲げ、理解活動に取り組む原子力国民会議他主催の「原子力立地地域全国大会」が10月31日に始まった。11月1日までの2日間、立地自治体の首長や議員、女性団体によるディスカッション、有識者による講演などを通じ、地域の声を反映させるとともに連携を深めていくことを目指す。
 衆議院第一議員会館で行われた1日目は、開会に際し、原子力国民会議共同代表で元文部大臣の有馬朗人氏が挨拶に立ち、地球温暖化問題に対する世界的な関心の高まり、再生可能エネルギーの不安定性などを述べ、「原子力が最も確実な国の将来を託すことのできる固い選択肢」と強調した。その上で、原子力立地地域を「日本のエネルギー確保に大きく貢献している」と称え、さらなる協力・連携に向けて、有意義な大会となるよう期待した。一方で、科学技術行政をリードしてきた経験から有馬氏は、「工業論文の数を見ると、今や中国は世界一に躍り出ている」とも述べ、近年の日本の科学技術力の低迷を憂慮した。
 また、政府や自由民主党で多くの要職を歴任した細田博之衆議院議員も、先般の北海道胆振東部地震を振り返り、「泊発電所が動いていれば、道内全域のブラックアウトは起きなかっただろう」と述べ、原子力発電所の再稼働が進まぬ状況を「一刻も早く克服せねばならない」と強調した。
 立地地域からは、敦賀市長の渕上隆信氏が挨拶の中で、自身が会長を務める全国原子力発電所所在市町村協議会が設立50周年を迎えたことを披露し、「国策の最前線で原子力と向き合ってきた」とした上で、エネルギー政策に関して、「日本が国際競争力を獲得すべく、原子力を選択した当時の理念」に立ち戻り、「地に足の着いた原子力政策」が進められるよう求めた。
 核燃料サイクル政策に関して講演を行ったエネルギー戦略研究会会長の金子熊夫氏は、使用済み燃料の再処理について、外務省の初代原子力課長として日米交渉に当たった経験から、「貴重な権利」であり、再処理で得られるプルトニウムは「貴重なエネルギー資源」として利用すべきであり、「中長期的に核燃料サイクル政策を下ろすべきではない」と述べた。さらに、金子氏は、日米原子力協定延長に伴う国内外での反対運動の激化にも触れ、「繰り返し辛抱強く、原子力の必要性を訴えるべき」と強調した。
 また、ジャーナリストの櫻井よしこ氏(=写真)は、講演の中で東日本大震災発生時に東京電力福島第二原子力発電所長だった増田尚宏氏に当時の状況を聞いたインタビューについて紹介した。その中で、増田氏は、「時々刻々と現場の状況を皆に話した。下請けも含め皆、原子力のエキスパート。原子力発電所という大きな仕組みを理解できる優秀な集合体だった。『何をしなければならないか』、現場の人たちは言われなくても理解できていた」と話したという。その上で、櫻井氏は、「こうした誇りとすべきことが全然報道されていない。悪いところばかりに焦点が当たると、人々は『怖い、危険だ』と思い込んでしまう」と、マスコミの姿勢を厳しく指摘した。さらに、六ヶ所再処理工場を長く取材してきた経験にも触れ、「これからの日本のエネルギーを考えるとき、原子力なしでは到底立ち行かない」として、技術者も自信と気概を持って取り組んで欲しいと訴えた。