食品中の放射性物質に関する意見交換会、生産者や消費者を交え

 食品安全委員会、消費者庁、厚生労働省、農林水産省が連携して行う食品中の放射性物質に関する意見交換会が11月12日、都内で始まった。東京を皮切りに11月中に静岡、大阪、沖縄で開催の予定。
 東京会場では、宮腰光寛・内閣府消費者・食品安全担当大臣(=写真)が、開会挨拶の中で、政府として、国産食品の輸入規制を講じている国に対し、科学的知見に基づく判断で緩和や撤廃を要請してきた経緯を述べた。また、東日本大震災から約7年半が経過し、食品中の放射性物質基準値を超過するものは一部の品目を除きほとんど検出されていない現状を強調した上で、輸入規制撤廃の加速化は「国内での理解が基礎となっている」として、有意義な意見交換となることを期待した。
 今回の意見交換会は、震災直後と比べ、報道を通じて食品中の放射性物質に関する情報を得る機会が減ってきたことから、現状を知らずに不安を持つ人も多いという実態をとらえ、放射線の専門家、福島で農業を営む生産者、消費者団体などから改めて意見を聴き、今後の消費行動について考えるのがねらい。消費者庁が3月に発表した意識調査結果によると、福島県産の食品を購入しない人に理由を尋ねたところ、「特に理由はない」が最も多く42.5%を占めていた。
 意見交換には、関係行政機関の他、福島県立医科大学放射線治療医の佐藤久志氏、新妻有機農園代表取締役の新妻良平氏、八王子市民放射能測定室「ハカルワカル広場」共同代表の西田照子氏、日本生活協同組合連合会安全政策推進室長の内堀伸健氏が登壇した。
 その中で、福島県広野町から来た新妻氏は、純米酒や無添加味噌の製造・販売や子供たちを招いた体験農業の取組について紹介した上で、「東京のテレビ局から年に1回程度、風評被害に困っている映像を撮影したいという依頼が来るが、『あなた方が風評を生んでいるのでは』といつも答える」として、特に都市部で現場の努力が知られていない実情を憂慮した。
 これに対し、2012年から市民活動として食品中の放射線測定を続けている西田氏は、「食品検査を通じて生産者の努力を感じた」とする一方、福島第一原子力発電所事故で放出されたセシウムについて、「自然放射線ではない」ことから不安を訴えた。
 専門家の立場から、佐藤氏は、生命維持に不要なセシウムは尿で体外に排出されてしまうことを説明したほか、自然放射線についても定量的に図示した上で、「我々は放射線に囲まれている。他の様々な要因と比較しないとリスクはわからない」などと答えた。
 また、内堀氏は、流通業者であるとともに、消費者団体としての立ち位置からも、現地ボランティアや募金活動を継続し、食を通じた復興支援に取り組んでいく考えを述べた。
 会場参加者からは、検査に要する費用負担に関する質問や、「震災直後に設定された現在の基準値を維持することで、まだ汚染が厳しいことを暗に発信してはいないか」という、基準値見直しの必要性を示唆する意見もあった。