東京電力「原子力改革監視委員会」、たゆまぬ改善に努めるよう提言

2019年1月30日

記者会見に臨む、クライン委員長、櫻井正史委員、鈴木一弘事務局長(左より、東京電力本社にて)

 元米国原子力規制委員会(NRC)委員長のデール・クライン氏を委員長とする東京電力の諮問機関「原子力改革監視委員会」が1月29日に開かれ、同社が10月に報告した「原子力安全改革 重点課題に対する自己評価」へのレビュー結果が取りまとめられた。
 自己評価は、東京電力が福島第一原子力発電所事故などの反省を踏まえ2013年に策定した「原子力安全改革プラン」による取組の成果を、(1)組織・ガバナンス、(2)人財育成、(3)コミュニケーション、(4)安全文化、(5)内部監視機能――の重点課題別に計15項目を5段階評価(高い順に、V~I)したもので、ほとんどが「V」または「IV」の高評定となっている。
 これに対し、委員会は今回のレビュー結果の中で、改革に向けた組織・制度を整備してきたことに評価を示す一方、「自己評価結果と実態とのギャップ」があるとして、「自組織を厳しく評価し、特に弱点を指摘して欲しい」と、たゆまぬ改善活動に努めるよう求めた。また、今後の組織体制に関しては、(1)役割・権限を含めた業務系統を明確化、(2)事故後に設置した組織について実績を総括し今後のあり方を再構築――する検討の時期にあるとしている。
 レビュー結果では結びに、(1)改革の本質や必要性に対する理解は進んでいるが組織の末端にまで浸透していない、(2)改革の必要性は理解しても能力が不十分、(3)社会が期待する対話レベルに達していない――といった課題をあげ、改革の実効性を高めるよう根本原因を分析して欲しいと述べている。
 委員会発足時からコミュニケーションの課題を指摘し続けてきたクライン氏は、同日東京電力本社における記者会見で、「コミュニケーションを改善することなくして、社会からの信頼は回復できない」と改めて強調し、「データをただ流すのではなく受け手側にわかるような情報を付与すべき」などと述べた。また、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働について問われたのに対し、クライン氏は「物理的な安全対策とともに発電所員の教育・訓練にも努めていることを対外的に発信し、規制当局に証明することができれば、安全に運転を再開することはできる」と答えた。
 委員会よりレビュー結果を受け、東京電力では、(1)基本動作の徹底、(2)組織/階層間での確実な情報伝達、(3)事故/トラブルの兆候を捉えた迅速な対応――に重点的に取り組み改善を推進するとしている。自己評価の一方で、柏崎刈羽原子力発電所における洞道ケーブル火災や福島第一原子力発電所の処理水分析結果に係る説明不足など、技術力とコミュニケーション能力に起因するトラブルが発生したことについては、「期待要件とのギャップを確認」と重く受け止めた。
 「『伝える』広報から『伝わる』広報へ」と指摘されたコミュニケーションに関しては、一例として、「処理水ポータルサイト」(和英)を1月21日までに開設するなど、改善が進められているところだ。