「ATENAフォーラム」開催、原子力の重要性を確認し社会との対話のあり方など議論

2019年2月15日

 「原子力エネルギー協議会」(ATENA、門上英理事長〈三菱重工業〉)が活動状況を報告するとともに、今後原子力産業界関係者が取り組むべき課題を共有する「ATENAフォーラム」が2月14日、都内で開催された。ATENAは、2018年7月に原子力のさらなる安全性の向上を目指す新組織として設立され、原子力産業界全体で知見・リソースを活用し共通的な技術課題に取り組むことをミッションとしている。
 フォーラムでは、遠藤典子氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授)による進行のもと、「重要電源である原子力発電を安全かつ持続的に利用するための成功要因は?」と題するパネルディスカッション(=写真)が行われ、まず、事業者の立場から関西電力副社長の豊松秀己氏が原子力発電を巡る課題を提起した。豊松氏は、エネルギー基本計画が掲げる「エネルギーミックス」の実現に向け、新規制基準をクリアしたプラントだけでなく、審査がまだ申請されていないプラントも含め「何としても再稼働しなければならない」と強調。さらに、原子力発電の比率が低下している現状に関し、電力コストや温室効果ガスの増加に伴う国民生活や経済活動への悪影響とともに、工事会社19社の売上げ実績が2010年度比でおよそ半分に激減しているデータを示し、「原子力産業が立ち行かなくなる。今の状況を早急に打破する必要がある」などとしてATENAへの期待を訴えかけた。
 海外からは、米国原子力エネルギー協会(NEI)副会長のジョン・コテック氏が、運転期間延長などが進められ、米国の原子力発電は設備利用率90%のパフォーマンス向上を達成し、エネルギー供給、環境保全、雇用の確保、イノベーションといった社会からの要請に応えていることを述べ、規制当局も含めた対話活動の重要性を示唆した。また、ATENAが12月に技術協力協定を締結したフランス電力(EDF)原子力国際担当部長のエルベ・マイヤール氏は、原子力が地球温暖化問題の解決に向け「脱炭素化の不可欠要素」である一方、建設コストや人材育成など、多くの課題が山積していることをあげ、「国を越えた共通の解決策」を見出す必要性を強調した。
 ATENAの理事を務めている豊松氏が「ATENAは発足したばかりで、まだ成果が出ていない。これからいかに頑張っていくか」と述べると、日本電機工業会専務理事の髙本学氏は、「発注・受注という関係にとらわれるのではなく、『日本の原子力をどうするのか』という視点が重要」として、これまで技術・人材を蓄積してきたメーカーとしての意気込みを示した。
 遠藤氏が今後の社会との対話のあり方について問うと、資源エネルギー庁の自主的安全性向上に関するワーキンググループをリードした山口彰氏(東京大学大学院工学系研究科教授)は、「特効薬はない。困難なのは日本だけでなく世界共通」とした上で、「『イエスかノーか』で取り上げるのではなく、まず色々な問題とリンクしていることを社会に示す必要があるのでは」などと糸口を付けた。