海外大使館関係者と学生がエネルギー政策に関し対話、リテラシーなどを巡り意見交換

2019年2月20日

各国のエネルギー政策について語る大使館関係者ら(左手)と学生たち

 海外の大使館関係者と学生との対話を通じ「エネルギー社会と原子力」について考えるユニークなセミナー(日本学術振興会主催)が2月13日、東京大学(本郷キャンパス)で開催され、将来のエネルギー政策に向けて、リテラシーやコミュニケーションのあり方を巡り意見を交わし合った。
 海外の大使館からは、駐日フランス大使館原子力参事官のスニル・フェリックス氏が、最近のフランスのエネルギー政策動向に関し、5年ごとに改定される「エネルギー複数年計画」(PPE)をあげ、原子力については、特に福島第一原子力発電所事故以降の顕著なコスト増から、2035年までに発電比率を70%から50%に引き下げる方向性が示されているとした。一方で、使用済み燃料については、「95%のエネルギーポテンシャルを残しており廃棄物ではない」として、日本と同様に再処理を含む原子燃料サイクル政策をとっていることを明言。また、原子力立地地域におけるコミュニケーションについては、法令に基づき設置される「地域情報委員会」(CLI)の取組を紹介し、批判的な人も含め多様な関係者による対話活動を通じ信頼関係を築いていく重要性を強調した。
 この他、駐日英国大使館からはエネルギー・気候政策に携わるナオミ・コウアン氏が、ヒンクリーポイントC原子力発電所計画の進展やセラフィールドサイトの廃止措置に関する映像を披露。ドイツ、スウェーデンのエネルギー政策については、カールスルーエ工科大学機械・電気工学部門長のヨアヒム・クネベル氏、北欧で研究活動に従事した経験のある環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏がそれぞれ発表を行った。

福井県立若狭高校の田中櫻子さんは、原子力立地地域としての思いを英語で発表

 また、学生からは計8件の発表があり、その中で、早稲田大学高等学院の廣瀬隼さんはクラブ活動の一環で行った国内原子力発電所の立地に関する調査から液状化現象の不安を述べ、福島高専の班目実香さんは研究機関のパンフレット作成に係った経験から「原子力関係の知識を小中学校から教えるべき」と主張した。地元の石炭火力発電所建設計画をきっかけにエネルギー問題に関心を持った関東学院六浦高校の山下海州さんは、環境保全の観点から、再生可能エネルギーをベースとし受動的安全性に優れた次世代型原子炉の開発を進めることを提案した。
 コミュニケーションのあり方に関しては、日本原子力学会学生連絡会会長を務める東京工業大学大学院の村本武司さんが、専門家と一般の人たちとが対話する「サイエンスカフェ」の企画経験を通じ若い世代に対する発信力を感じたなどとしている。
 学生と海外大使館関係者らとのディスカッションで、学生からは、「フランスで原子力事故が発生する可能性はないのか」、「英国の発信力に感銘を受けた」といった発言があった。ドイツのクネベル氏は、「賛成、反対にかかわらず、基本的な知識をしっかり身に付け、それをもとに判断できるようになって欲しい」と学生たちに語った。