経済同友会が提言、エネルギーミックス実現に向け原子力政策の再構築を

2019年3月5日

 経済同友会は2月28日、今夏開催予定のG20の議長国として日本が検討を進めている「パリ協定長期戦略」に向けて、提言「2030年目標の確実な達成と2050年の展望」を発表した。
 現在政府有識者懇談会で策定への議論が行われている「パリ協定長期戦略」は、温室効果ガス低排出型の経済・社会の発展を目指す未来の成長戦略となるもの。現在の政策で、2030年に向けては、エネルギーミックスとそれに基づく温室効果ガス削減目標(2013年度比で26%減)が、さらに長期的目標として、パリ協定を踏まえ、地球温暖化対策と経済成長を両立させながら「2050年までに80%の温室効果ガス排出削減を目指す」ことが掲げられている。
 今回発表された提言は、東日本大震災以降の化石燃料の消費増や米国によるパリ協定離脱表明などに鑑み、経済同友会の環境・資源エネルギー委員会が、2030年までに取り組むべき課題と、2050年以降のシナリオを考える上で着手すべき課題を整理したもの。
 2030年エネルギーミックスが掲げる「再生可能エネルギー22~24%(電源比率)」、「原子力22~20%(同)」との目標に関し、提言では、再生可能エネルギーの多くを占める太陽光発電は日照時間に左右され、原子力についても「社会的受容の低さ、核燃料サイクル・最終処分の未決着などがボトルネック」と指摘し、目標達成は不可能と警鐘を鳴らしている。その上で、(1)再生可能エネルギーの大量導入、(2)原子力政策の再構築、(3)高効率石炭火力によるCO2排出低減――の諸課題解決が急務であると強調。再生可能エネルギーの導入促進に向けては、市場メカニズムの活用や利水・治水を目的としたダムの発電利用などをあげた。
 原子力政策については、国民に対する明確な意思表明とともに、原子力事業環境の整備も国が民間任せにせず責任を持って取り組むべきことを訴えている。また、使用済み燃料問題を「喫緊の課題」ととらえ、核燃料サイクル政策に関する方針を明確化し、高レベル放射性廃棄物の処分地選定も国が前面に立ち2020年までに調査段階に進むようプロセスを加速することを求めている。さらに、国家主導の原子力人材育成の仕組みづくりに関して、英国政府が6月に公表した支援政策「原子力セクターディール」を例示した。同政策では、民間企業と協力した高等学校への専門家派遣・インターンシップや、原子力労働者の女性割合を2030年までに40%に引き上げる目標などが盛り込まれている。
 2050年以降を見据えた課題としては、小型で安全性・経済性に優れた次世代原子炉の研究開発の推進や、核融合を始めとする「ムーンショット」(野心的な構想)への挑戦などがあげられている。