環境省検討会、除染で発生する土壌の再生利用進捗に向け技術的手引き書案示す

 福島第一原子力発電所事故に伴う除染で発生する土壌の処理に関する環境省の有識者検討会は3月19日、除去土壌の減容・再生利用に向けた技術開発戦略の進捗状況について報告するとともに、再生資材を取り扱う際の技術的留意事項を整理した手引き書案をまとめた(=写真)。
 福島県内で除染に伴い発生する放射性物質を含む土壌・廃棄物などは、最終処分までの間、中間貯蔵施設(大熊町・双葉町)で集中的に管理・保管することとなっており、2015年3月より仮置場からの搬入が開始されている。また、国は貯蔵開始から30年以内に福島県外で最終処分を完了するよう措置を講ずることが関連法に定められていることから、環境省では最終処分量の低減のため、2016年に減容・再生利用に向けた技術開発戦略を策定し、有識者検討会において随時進捗状況をレビューするとともに戦略の精緻化を図っている。先の検討会で示された本戦略の改訂案で、対象となる除去土壌などの総発生量は、2018年10月時点で推計約1,330万立方m(東京ドームの約10杯分)とされた。
 19日の検討会で環境省は、除去土壌の再生資材化に向けた実証事業の技術的確認結果について報告した。例えば、南相馬市で実施した盛土構造物造成では、全体土量約4,000トンのうち、再生資材を約700トン利用した試験盛土における放射線モニタリングで、空間線量率が施工前と施工中で大きな変動がなく、盛土浸透水の放射能濃度もすべて検出下限値未満であることが確認されたとしている。飯舘村では、農業再生のゾーンで、全体で34ha規模を見込む資材ストックヤードと除去土壌再生資材化エリアを整備することとしており、12月から実施されているハウス試験栽培での生育性やセシウム移行係数の確認結果を受け、今春以降は露地栽培も計画されている。また、二本松市では、仮置場内の大型土のう袋約500袋分の除去土壌を用いた道路での再生利用に向けた実証試験が計画中だ。
 技術開発戦略では、除去土壌の再生利用や最終処分に対する「全国民的な理解が必要不可欠」との考えから、政府、自治体、学術・教育機関、NPOなどが連携し情報発信や普及啓発に取り組むこととされているが、昨秋に全国を対象に実施したアンケート調査結果によると、半数以上が除去土壌の再生利用について「聞いたことがない」と回答している。