東大・上坂教授、原子力分野における社会人教育の必要性を強調
東京大学大学院工学系研究科教授の上坂充氏は4月2日、原子力委員会会合で、同学の原子力教育組織の変遷と専門職大学院の取組について発表し、社会人教育の必要性などを訴えかけた。原子力委員会では、2018年2月に取りまとめた原子力分野における人材育成に関する見解を踏まえ、随時有識者からのヒアリングを行っている。東大では、1993年に原子力工学科・専攻がシステム量子工学科・専攻に改称された後、2000年には学部のみがシステム創成学科に改編、2005年には原子力国際専攻と東海村の原子力工学研究施設などを改組した原子力専攻(専門職大学院)の設置といった変遷をたどっている。上坂氏によると、学科・専攻名改称の背景には、チェルノブイリ事故後の原子力関係学科の人気低迷があったとしており、システム創成学科の設立に至った経緯としては、工学部全体のエンジニアリングからマネジメントへの拡大・強化の動きなどをあげた。システム創成学科は、環境・エネルギーシステムコースなど、3つのコースで構成されており、定員は学部最大の150名。
高等教育課程における専門職大学院は、高度専門職業人を養成するため理論と実務を結んだ実践的教育を行う大学院として2003年度に創設されたもので、法科大学院や教職大学院がよく知られているが、原子力分野では東大の原子力専攻が国内唯一である。2017年度文部科学白書によると、専門職大学院は社会人の比率が約50%に上っている。
上坂氏は、東大の原子力専攻で現在、電力、メーカー、行政機関、研究機関に勤務する若手社会人が学んでいることを述べた上で、同専攻の他、原子力人材育成で社会人教育の場を形成しうるものとして、2018年度より原子力規制庁が開始した検査官などの任用資格制度と、国家資格「技術士制度」をあげた。原子力規制庁の任用資格に関しては、資格取得に向けて自身の業務を離れ研修・訓練に専念する教育訓練課程、いわゆる「検査官養成学校」が開設され、前年度初頭の1期生5名入校に続き、4月1日に7名の職員に対し入校辞令が交付されている。また、2004年度に「原子力・放射線」部門が開設された「技術士制度」に関しては、関連の学協会でも資格取得に向けた支援が行われているが、上坂氏は、米国機械学会の取組も参考に、実務に直結する資格として認知度が上がるよう、オールジャパンでの教育がなされる必要性を訴えた。