量研機構が「HIMAC」25周年で記念講演、「がん死ゼロ健康長寿社会」を目指し

「HIMAC」では技術開発により、がんの形状に応じ精密な治療を可能にしてきた(写真は新治療研究棟内、回転ガントリーで治療台を傾けずに重粒子線を照射できる)
「HIMAC」は、外科手術や化学療法に比べて身体への負担が軽い放射線療法の中でも、特にがんの殺傷効果が高く、かつ正常組織へのダメージが少ない治療を提供する装置として、1994年に臨床試験を開始。2003年には厚生労働省より高度先進医療の承認を受け、これまで12,000例を超える治療実績を積んできた。さらに、「HIMAC」が設置される放射線医学総合研究所は、「痛みがなく、患者の負担が軽い」治療の普及に向けて、装置の小型化・コスト削減を目指す研究開発や人材育成・技術支援をリードするなど、現在国内6か所で展開される重粒子線がん治療のトップランナーとなっている。
講演会では、量研機構の平野俊夫理事長、辻井博彦QST病院副病院長らが重粒子線がん治療のこれまでの歩みや将来展望について発表したのに続き、日本対がん協会会長の垣添忠生氏が登壇。「高齢社会をイキイキと生きる」と題し講演を行った垣添氏は、高齢で活躍中の著名人として、放射線医学総合研究所の設立に関わった中曽根康弘氏や、瀬戸内寂聴氏(小説家)、篠田桃紅氏(書道家)らをあげながら、今回のテーマである「がん死ゼロ健康長寿社会」を目指し、次の25年に向けて「HIMAC」のさらなる進化に期待した。
垣添氏は、映画「バベットの晩餐会」が描く、牧師の死により争いが絶えない村人たちが美味しい料理で打ち解けるようになったストーリーを例に、「食べることは人間の平和につながる」と、食の重要性を訴えた。また、「空を飛ぶものは飛行機以外、四足のものは机以外、何でも食べる」といわれる中国人の食に対する関心の高さなども紹介。その上で、「最期まで口からものを食べるのは、人間の幸福であり尊厳。『HIMAC』はそれを支える重要な一翼を担う」と強調した。

パネル討論の模様、平野理事長(右端)が量研機構の各部門が持つ超伝導やレーザー加速器などの技術力を強調