量研機構・平野理事長が会見、新たな体制で重粒子線治療普及に向けた研究開発など強化

「これからのがん治療はQOLが最も重要」と重粒子線治療の将来性を強調する平野理事長(右、中央は中野量子医学・医療部門長、左は山下高度被ばく医療センター長、量研機構東京事務所にて)
新たに理事長直轄組織として設置された「量子生命科学領域」では、機構が発足当初から掲げてきた目標「量子論や量子技術に基づく生命現象の解明と医学への展開」に向けて、各拠点の有機的連携を図るとともに、大学の研究者を迎え入れる「クロスアポイントメント制度」を設けるなど、オールジャパン体制で取り組んでいく。平野理事長は、新たな研究分野である量子生命科学に「学問的研究からイノベーションへ」と期待を寄せ、得られた成果を広く社会に還元していく姿勢を示した。
合わせて創設された「量子医学・医療部門」には、放射線医学総合研究所(放医研)、高度被ばく医療センター、QST病院を設置している。放医研は研究開発に特化し、「がん死ゼロ健康長寿社会」の実現を目指して、他部門とも連携し超伝導やレーザー技術を結集した「量子メス」の研究開発に取り組む。放医研病院を衣替えしたQST病院では、研究成果の臨床応用を促進するとともに、「国際治療研究センター」を新設し、重粒子線がん治療に関する外国人研修の受入れを行う。

「HIMAC」に始まる重粒子線治療装置の進歩、さらなる小型化・高性能化を図り「すべてのがんが1回で治療できる」ことを目指す(量研機構配布資料より引用)
また、高度被ばく医療センターの取組については、同センター長の山下俊一氏が説明。原子力規制委員会より全国5か所の「高度被ばく医療支援センター」(同センターの他、弘前大学、福島県立医科大学、広島大学、長崎大学が指定)の中でも中心的・指導的役割を担う「基幹高度被ばく医療支援センター」に指定されたのを受け、「しっかりと連携しオールジャパン体制を構築していく」とした。