エネ調基本政策分科会が半年ぶりに開催、昨今の情勢変化を踏まえ

2019年7月1日

 総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=榊原定征・東レ社友/元社長・会長)が7月1日、6か月ぶりに開催され、昨今のエネルギーを巡る動向に関し意見交換を行った(=写真)。
 6月29日に閉幕したG20大阪サミットを前に、6月15、16日に、「G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する閣僚会合」(G20軽井沢会合)が開催された。1日の分科会では、G20軽井沢会合で環境と成長の好循環やエネルギー転換の重要性について合意されたことを資源エネルギー庁が説明したほか、最近のエネルギー安全保障・地政学を巡る動向・変化を、(1)需給構造、(2)地政学リスク、(3)環境認識、(4)テクノロジー、(5)日本の立ち位置――に整理し、委員に意見を求めた。
 需給構造、地政学リスクを巡る最近の世界情勢として、資源エネルギー庁は、それぞれ「米国のエネルギー純輸出国化」、「中東情勢の緊迫化」などを例示。これに関し、寺島実郎氏(日本総合研究所会長)は、「ホルムズ海峡は、日本に輸入される石油の80%、LNGの25%が通るが、米国に向けてはもう一滴の石油も通っていない」と、国情の違いを指摘し、日本として新たなエネルギー戦略を検討していく必要性を強調した。
 また、4月に福井県知事に就任し今回初めて同分科会会合に出席した杉本達治氏は、昨夏策定の第5次エネルギー基本計画で掲げる「2030年度に原子力比率22~20%」や40年超運転の実現に向け「国の動きがみえてこない」としたほか、使用済み燃料問題や原子燃料サイクルについては「放置されたままのようにみえる」と、国の原子力政策に対する姿勢を厳しく指摘。国民理解活動の促進とともに、昨今の原子力関連学科の衰退や原子力プラントの長期停止・廃炉の進展にも言及し、将来を見通した人材育成や立地地域振興策の拡充などを求めた。
 G20軽井沢会合では、高レベル放射性廃棄物問題に関し、「最終処分の実現は、原子力を利用するすべての国の共通課題」との観点から、世界の主要な原子力利用国の政府が参加する「最終処分国際ラウンドテーブル」を立ち上げることで賛同が得られ、第1回ラウンドテーブルが10月中旬にOECD/NEA協力のもと、パリで開催される運び。これに関して、総合資源エネルギー調査会の放射性廃棄物ワーキンググループ委員長を務めた増田寛也氏(東京大学公共政策大学院客員教授)は、処分場立地の適性を色分けした「科学的特性マップ」の公表から間もなく2年が経つところ、「具体的な勉強会立ち上げの必要もある」などと述べた上で、ラウンドテーブルによる国際的知見の共有が解決の糸口となることを期待した。