規制委と関電が意見交換、「美浜3号機事故から15年」の取組状況など

2019年8月29日

 原子力規制委員会8月28日、関西電力の岩根茂樹社長らを招き意見交換を行った(=写真)。同委が原子力事業者の経営トップを順次招き実施しているもので、今回、同氏には電気事業連合会会長の立場からの意見も求めた。
 岩根社長は、同社の3つの原子力発電所の近況を示し、特に高浜発電所については、60年までの運転に向けた安全性向上対策やテロ対策の「特定重大事故等対処施設」(特重施設)設置に伴う工事により、「1日に4,000人以上もの作業員が出入りする」などと、大規模工事が集中している現状を述べ、マネジメントを工夫しながら要員の重点配置を図っていることを説明。
 また、2004年の美浜3号機二次系配管破損事故から15年が経過したことに関し、これまで再発防止対策と安全文化の再構築に努めてきた結果、「安全最優先の理念が浸透してきた」とする一方で、「近年事故を知らない世代も入ってきた」ことから、改めて「安全文化の原点」として事故の経験を風化させぬよう全社を挙げ取り組んでいく姿勢を示した。
 委員からは、地震・津波関連の審査担当の石渡明委員が2017年に高浜2号機で発生したクレーン倒壊事故を振り返り自然現象に対するリスク管理について、プラント審査担当の山中伸介委員が関連会社「原子力安全システム研究所」(INSS)の取組について質問。これに対し、岩根社長は、台風接近時の警戒本部設置や重機作業現場の定期巡回点検など、「自然災害への感受性を高める努力」を怠らないことを強調したほか、INSSの特徴的な活動例としては、安全文化評価や緊急時対策本部要員のリーダーシップ能力研修をあげた。
 電事連会長の立場として、岩根社長は、プラント本体の工事計画認可から5年以内の設置が求められている特重施設について「各社とも早期完工を目指し、メーカーも含め最大限努力している」と強調。既に許認可された施設に対し新知見を踏まえた規制要求の適合性を確認する「バックフィット」については、「原子力エネルギー協議会」(ATENA)も通じ議論していく姿勢を示した。また、新規制基準適合性審査が大詰めの日本原燃六ヶ所再処理工場については、「事業に予見性を確保するためにも迅速な審査を願いたい」と要望した。
 更田豊志委員長は、意見交換終了後の記者会見で、「六ヶ所再処理工場は発電所と比べて機器数が極めて多い。事業許可となった場合、続くステップとして設計・工事認可や使用前検査も大きな課題」と述べている。