福島第一で「筋肉ロボット」が試験運用開始、燃料デブリ取り出しに向け遠隔技術の知見拡充

3号機タービン建屋に導入された柔構造アーム(©東京電力)

 東京電力福島第一原子力発電所では10月1日より、3号機タービン建屋の滞留水処理に向け、水圧シリンダーとバネで駆動する柔構造アーム(愛称「筋肉ロボット」)を導入し支障物の撤去を行っている。
 2020年内の完了を目指す建屋内の滞留水処理で、建屋最地下階の床面より低い位置に汲み上げポンプを設置する必要があり、このほど3号機タービン建屋に、開発中の柔構造アームを試験運用し、地上階からの遠隔操作によりポンプ追設に支障となる既設ポンプなどの撤去を開始したもの。これまでのところ、特段のトラブルもなくケーブル切断などが進められている模様(映像は こちら)。
 柔構造アームは、日立GEニュークリア・エナジーと中外テクノスの共同開発によるもので、(1)電子部品を使用せず水圧シリンダーとバネで駆動するため高放射線下でも稼働できる、(2)耐衝撃性が高い、(3)作動流体が水であるため破損した場合も滞留水の水質に影響を与えない――といった特長を持つ。
 日立GEでは、国際廃炉研究開発機構(IRID)の取組の中で、今後の燃料デブリ取り出しに向けた遠隔操作技術として、耐放射線性や耐衝撃性に優れた柔構造アームの研究開発を進めており、基本的な成立性の確認や開発課題抽出のため、試作機を複数製作し、階段走行、コンクリート破砕、把持動作、バルブ開閉などの試験を行っている。
 東京電力福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデントの小野明氏は、9月末の定例会見で、今回の3号機タービン建屋へのロボット導入に関し、「今後、人が近づけない場所での作業が増えてくる中、遠隔操作技術の活用が重要となってくる」と述べ、さらなる知見拡充を図る考えを強調した。