規制委と九州電力が意見交換、自然災害対策や「フロントランナー」意識など

2019年10月16日

原子力規制委員会と九州電力が意見交換

 原子力規制委員会は10月15日、臨時会議を開き九州電力の池辺和弘社長らと安全性向上の取組について意見交換を行った。同委が原子力事業者の経営トップを順次招き実施しているもの。
 就任から1年余りとなる池辺社長は、新たな品質方針の策定、全社メッセージの発信など、「何よりも安全を最優先とする九電DNAの浸透」に向けた経営トップの取組について説明。
 田中知委員が「特に重視している点」について問うと、池辺社長は「自ら現場に足を運び、モチベーションが十分に高まっているか、その場で声を聴く」と述べ、「現場第一主義の徹底は原子力安全の原点」であることを強調。また、新検査制度の試運用状況視察のため川内原子力発電所を最近訪れた山中伸介委員は、「シビアアクシデント訓練も非常にきびきびとしていた」などと評価した上で、小さな気付きを全員から確実に収集する「CAP」の取組について、「さらに自由に意見を言い合える雰囲気作りを」と要望した。
 九州電力では、2016年の熊本地震を踏まえ、当時新規制基準をクリアし再稼働していた川内原子力発電所の一斉点検を実施したが、自然現象への対応強化として、玄海原子力発電所も含め敷地周辺30km範囲を中心に地震観測点の増強などを図っている。地震・津波関連の審査を担当する石渡明委員は、九州地方の自然特性から、引き続いてのカルデラ火山に対するモニタリング観測体制強化とともに、最近の大型台風襲来に伴う冷却塔倒壊の事案にも触れ、厳しい気象災害への十分な備えを同社に求めた。

意見交換の後、取材に応じる池辺社長

 また、先陣を切って再稼働した川内1、2号機では、テロに備えた「特定重大事故等対処施設」が、プラント本体の工事計画認可から5年間とされる設置期限での完成が見通せなくなったことから、両機とも定期検査入りを前倒しした。これに関し、池辺社長は、「『フロントランナー』には時間的猶予が与えられないものか」と要望。更田豊志委員長は、プルサーマル発電でも先陣を切った九州電力の実績を振り返り、「『フロントランナー』の意識が同社を強くしてきたのでは」と述べ、福島第一原子力発電所事故後、諸外国に遅れを取ってきた新技術導入にも「フロントランナー」としての積極的な取組を期待した。
 この他、玄海1、2号機の廃炉決定に伴う廃棄物処理、使用済み燃料の貯蔵・搬出、人材育成などに関する質疑応答があった。