情報通信研究機構他が太陽放射線被ばく警報システム開発、ICAOにデータ提供開始
情報通信研究機構は11月7日、太陽活動に伴う通信への影響や放射線被ばくなどに関する情報提供を、国際民間航空機関(ICAO)のグローバル宇宙天気センターのメンバーとして開始した。近年北極上空を飛行する極航路が増加しており、特に高緯度地域では太陽表面で稀に発生する爆発現象「太陽フレア」が人体への被ばくを高めることから、今回の取組を通じ海外の関係機関とともに安心・安全な航空運用に寄与する。
同日の各機関連名の発表によると、地上と人工衛星の観測装置を用いて「太陽フレア」発生時に飛来する太陽放射線の突発的増加をリアルタイムに検出する「WASAVIES」では、高度100kmまでの宇宙放射線被ばく線量が高精度で推定され、乗務員の被ばく線量管理や航空機の運航管理に資するものとしている。
「WASAVIES」は、太陽放射線の(1)地球近傍までの伝搬、(2)地球大気上層部までの伝搬、(3)地球大気内で起こす核反応――の各数値シミュレーションから主に構成されており、これらを統合することで、航空機高度での被ばく線量を計算。急激な被ばく線量の上昇が検知された場合は警報発信となる。名古屋大学を中心に過去の大規模な「太陽フレア」発生時のデータによるシステムの性能評価で有効性も確認。今後は、有人月・惑星探査計画の進展などを見据え、宇宙飛行士の被ばく管理にも利用できるシステムの開発を目指すとしている。
ICAOのグローバル宇宙天気センターは、航空運用に支障を来すおそれのある宇宙天気現象の情報を各国に送信する役割を持ち、「ACFJコンソーシアム」の他、米国、「PECASUSコンソーシアム」(フィンランドなど9か国で構成)の3つが認定されている。