原子力委員会が人材育成で大学からのヒアリングを開始、初回は名大と阪大

2019年12月12日

 原子力委員会は12月10日の定例会合で、同委が2018年2月に発表した見解「原子力分野の人材育成について」のフォローアップとして、大学関係者からのヒアリングを開始。今回、名古屋大学工学部教授の山本章夫氏と大阪大学工学部教授の北田孝典氏より、原子力教育の現状と課題についてそれぞれ説明を受けた。今後、数回にわたり実施する予定。
 名古屋大学の原子力関連の学部教育は、1966年の原子核工学科設置に始まり、その後、物理工学科への改組を経て、2017年の組織再編で現在はエネルギー理工学科(定員40名)、大学院教育は、1970年の原子核工学専攻設置に始まり、マテリアル理工学専攻への改組を経て、現在はエネルギー理工学専攻(同18名)と総合エネルギー工学専攻(同18名)で行われている。山本氏の説明によると、大学院の両専攻に置かれる計14の研究グループのうち、半数程度が原子力をテーマとしているという。課題としては、燃料・材料の分野で講義のできる教員がいないことをあげた。
 また、同氏は、学部4年生や大学院生向けの特別講義枠として原子力規制庁の補助で実施する「原子力規制人材育成事業」(2016~20年度)を紹介。カリキュラムでは、原子力安全に関する講義・演習・実習を強化しており、「安全について体系的に学べる」ことから電力関係からの参加も多く、「社会人としてのスキルが学生に伝承され、社会人は学生から刺激を受けるという好循環が生じている」と、リカレント教育の場を通じた相乗効果を強調した。さらに、山本氏は、自身が部会長を務める日本原子力学会炉物理部会の活動として、初心者向けに数式を使用しない原子炉物理のテキスト作成を進めていることも述べた。
 大阪大学の北田氏は、当初の原子力工学科・原子力工学専攻が、2006年までに改組され、現在、環境・エネルギー工学科・環境・エネルギー工学専攻で行っている同学の原子力関連の教育について説明。カリキュラム改善に向けた取組の一方、今後大学の組織再編により削減の見通しにある教員構成、福島第一原子力発電所事故以降減少傾向にある原子力関係への就職状況、留学生の増加施策に伴う教員の負担増など、山積する課題を述べた。