将来の科学者のためのJoshikaiⅡ(第2回):科学・工学に関する国際メンタリングワークショップのグループワークを発表
(第2回:2日目)
2日目となる8月9日は、参加した女子中高生によるグループワークが行われた。全国各地12校(中学3校、高校9校)から参加した51人が、グループに分かれ、それぞれ自分の将来について活発な討論を行い、その結果を報告した(=写真)。各グループには、理系の先輩として、メンターとなる女性研究者が、学生たちの議論をサポートした。
テーマは「22歳の自分」「32歳の自分」が与えられ、個々にその年齢になった自分の姿を想像し、どのような道を選び、生きているかについて意見を述べ合う形で進められた。医師や科学者、薬剤師などを目指し、世の中の役に立ちたいとする学生が多い中、鑑識を学び、犯罪解決に貢献したいという個性が光る生徒もいた。
「32歳の自分」を想像した時に、家庭と仕事の両立に不安を抱く生徒もいたが、世界から集まったメンターの助言を得たことで「前向きに楽しみながら、自分の考えに自信を持つことの大切さに気づいた」などの意見を示したグループもあった。
このほか「何か困難に突き当たろうとも道は一つではない。次の目標に向かう。仕事は、コミュニケーション能力を高め、海外の知見も活用しながら結果を残す努力も必要だが、人とのつながりが一番大切だということが分かった」と発表するグループもあった。
グループワークでメンターとして参加した6人の研究者からは、「学生たちが各人の将来について具体的かつ深く考えていることに驚いた」とか「夢を追求することを怖れないでほしい。回りもサポートしてくれる」「ワークライフバランスなど、構造的、社会的問題はあるが、自分たちの家庭内で家事は女性がするものだといったステレオタイプ的な考えを打破してほしい」といったコメントが挙がった。
共同議長による総括として、京都大学の稲葉カヨ副学長は、生徒たちがワークライフバランスの課題を意識する中、「まずは自分で決断し、両親など周囲に相談し、近くにいるロールモデルをみつけることが大事。行き詰まったとしても道は一つではない」と述べた。
ケイト・マクフィー教授は、「想像力をもって、楽しみながら、進んでほしい。“これしかない”というのではなく、“一番良いと思う方向”を選んでいけばいい。気候変動やエネルギーなど、皆さんが32歳になる頃は世の中の動きも大きい。科学技術は変化の礎であり、その中で相応しい道を歩んでもらいたい」と述べた。
JoshikaiⅡの閉会式で、マグウッド事務局長は、自身が10代だった頃には鳥の専門家になりたいと思っていたが、その翌年には核融合や半導体の物理学者になりたいと考えが変わったことや、あるいは作家の方が向いているかもしれないと思ったことなどを振り返った。「何が自分にとって幸せか、どんな役に立つことができるのか。中には自分の才能に気がつかずに生涯を終える人もいる。自分の信念に基づいて進んでほしい」と述べた。
JAEAの渡辺その子理事は、“レジリエンス”というキーワードを引用し、厳しい環境に置かれても順応しながら打たれ強くなるよう励ました。「今回のワークショップが将来のヒントになると嬉しい。よく生き、柔軟に対応することが大事。フレキシブルに、他の人に助けを求めることをためらわないで。夢を持ち続けてほしい」と述べ、“将来を予想することは自分でその将来を生み出すこと”というドラッカーの言葉で締めくくった。
ワークショップ終了後に参加した生徒に個別に質問を投げかけた。このイベント参加を通じて何か自分の中で変化を感じるかという質問については「メンターの紆余曲折の生き方を聞いて、パッションや興味を大切にしていきたいと思った」といった回答があった。また、女性自身がバイアスを持っていることについては、「育児や家事をすることが評価される社会が必要」であるとか「女性が進出しやすい社会になってきているからこそ、女性らしさも大切にしたい」というコメントがあった。
多くの国際機関などの統計でも、日本における女性の社会進出は、先進国の間でも低いとされており、政府も改善に取り組んでいるなか、今回のワークショップは、10年、20年後の日本の科学分野への女性の活躍の機会が増え、多様な成果があがることへの期待を抱かせるようなチャレンジングなイベントであった。