第56回原産年次大会「会長所信表明」

2023年4月18日

日本原子力産業協会会長の今井でございます。第56回年次大会の開会にあたり、一言ご挨拶申し上げます。

新型コロナウイルスの感染が落ち着きをみせておりますため、オンラインと併用しつつ、今年は、より多くの方に会場へお越しいただく形といたしました。本日までに、630名の方に参加登録をいただき、この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。

さて、わが国では、本年2月に原子力利用の価値を明確にした原子力基本法の改正を含む、様々な方針や、法案が閣議決定されました。この中で、原子力を最大限活用する方針のもと、原子力発電プラントの再稼働を進めることや、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発や、建設に取り組むことなどが示されました。また、一定の停止期間に限り、60年超の運転延長を認めることにするなど、 我が国の原子力政策は大きく前進しようとしております。高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定についても、国がより前面に立って自治体との協議を行うなど、立地にむけた取り組みの強化が進められております。

このように、原子力に関連する大きな方向性が示された中、安全性を大前提に今後一つひとつの取り組みが、具体的、且つ確実に進展することを強く期待しております。そのためにも、政府におかれては、しっかりとした事業環境の整備を引き続きお願いしたいと思います。

さて、海外に目を向けますと、2年目に突入したロシアによるウクライナ侵攻は、世界のエネルギー安全保障に甚大な影響を与え続けています。さらに、地球温暖化への対応についても、待ったなしの状況となっており、エネルギー安全保障とカーボンニュートラルの両立に向け、原子力を「鍵」と位置付ける国が増えております。例えば、米国では、新型炉の開発や導入が、急ピッチで進められており、フランス、英国においては、原子力発電プラントの新設計画を促進するための、新たな制度が導入されました。さらに、脱原発を目指していた国々の中から、原子力へ回帰する動きが出てきております。原子力をめぐる、こうした足もとの世界的な情勢については、この後のセッション1でお聞きいただけると思います。

また、午後のセッション2では、「再評価される原子力」と題して、原子力産業の活性化と、世界的課題に対する原子力の貢献について議論いたします。先日「G7札幌気候・エネルギー環境大臣会合」が行われましたが、それに合わせ、世界の原子力産業団体は、共同メッセージを発出いたしました。共同メッセージでは、地球規模でのエネルギー安全保障と脱炭素化の実現に向け、原子力産業がなすべきことや、世界の政治リーダーへの要望を取りまとめました。セッション2では、こうしたメッセージを念頭に世界の原子力産業関係者による、活発な議論が展開されることを期待しております。

東日本大震災、および東京電力福島第一原子力発電所の事故から、今年で12年が経過いたしました。本年2月には、すべての希望する住民が帰還できるようになる改正案が閣議決定されるなど、福島の復興に向けた取り組みは着実に前進しております。長きにわたり、福島の復興にご尽力されてこられた多くの方々、ご支援をいただきました皆さまに、心からの敬意と、感謝の意を表したいと思います。

また、福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取り組みも確実に進展をしております。ALPS処理水については、放出設備の工事が現在佳境を迎え、官民を挙げた国内外での理解活動も同時並行で行われております。詳細は、明日午前のセッション3において最新の状況をご紹介いただけるものと思います。

さて、原子力は、発電は勿論のこと、それ以外の利用分野でも様々な貢献が期待できる懐の深い技術であります。明日午後のセッション4では、原子力の更なるポテンシャルを活かしていく未来についてご議論いただきますが、将来的なカーボンニュートラル社会の実現に向け、中心的な役割を果たすであろう若い世代の皆さんへ力強いメッセージとなることを期待しております。

最後に、お忙しいスケジュールの中、ご登壇いただきます皆さまに、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

これをもちまして、私の開会の挨拶とさせていただきます。ご清聴、ありがとうございました。

以 上

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