2017年度定時社員総会 今井会長 挨拶

2017年6月22日

 日本原子力産業協会 会長の今井でございます。定時社員総会の開会にあたり、ご挨拶申し上げます。
 本日は、お忙しい中を、ご来賓として、経済産業省から大臣政務官、井原巧様、文部科学省から研究開発局長、田中正朗様のご臨席を賜り、厚く御礼申し上げます。
 会員の皆様方には、遠路、また多数ご出席いただきまして、誠にありがとうございます。

 東日本大震災から6年が経過し、本年4月には帰還困難区域以外の避難指示のほとんどが解除されました。
 また、少しずつではございますが、再稼働も進んでおります。高浜3、4号機が運転を再開して、運転中のプラントは、ようやく5基になりました。他にも、新規制基準への適合性審査が終了しているプラントが7基ございます。
 遅れているBWRの審査も、柏崎刈羽6、7号機の審査は、大詰めを迎えていると伺っております。その他のBWRも審査が進み、早期に運転再開することを期待いたしたいと思います。
 本年4月には、近畿大学原子炉が試験研究炉としては初めて、新規制基準の下で運転を再開いたしました。今後は、人材育成など広い分野で、有効に活用することが期待されています。

 さて、昨今、地球温暖化に起因すると思われる大型台風などの異常気象が、世界的に多く見られる中で、温室効果ガスの削減に向けた、国際的な取り組みが進められています。わが国は、パリ協定の枠組みの中で、2030年までに温室効果ガスを、2013年度比で26%削減することを、国際社会に約束しております。それにとどまらず、世界共通の長期目標とされている、気温上昇2度未満の目標を達成するには、さらなる削減が求められます。
 これを実現するためには、既設の原子力発電所はもとより、40年を超えての運転期間延長、さらには新増設も必要になると思われます。

 原子力は、環境面をはじめ、エネルギー安全保障や、経済性も含めた「3E」の観点から、いずれをとっても優れている、大変価値のあるエネルギー源であることから、わが国のエネルギー基本計画では、重要なベースロード電源として、位置づけられているわけであります。
 また、アジアを中心とした諸外国には、多くの原子力発電所の新設計画があり、利用規模も年々拡大しております。その中で、技術力が高く核不拡散上も厳格な日本は、世界の原子力利用の中核的な役割を担っており、世界中の国々から非常に期待されています。
 わが国の原子力産業界は、そうした自覚を強く持つべきであります。

 福島第一原子力発電所の事故後、国内の原子力産業は大変厳しい状況にあります。
 しかし、原子力の再生のためには、まず我々自らが原子力発電の価値を再確認し、事故の教訓を反映した安全対策を講じて、再稼働を着実に進め、わが国の繁栄に貢献していかなければなりません。
 そのために、やらなければならないことが、いくつかございます。

 まず原子力産業界は、福島第一原子力発電所の廃止措置に着実に取り組まなければなりません。
 また、風評被害対策を含め、福島の復興に貢献していくことが大切でございます。

 その上で、今後も原子力発電を続けていくためには国民の理解を得ることが不可欠でございます。
 我々原子力産業界は、まずは、福島の事故を踏まえた安全対策を講じていることをしっかりと説明しなければなりません。さらに、政府や関係機関とも連携のうえ、一丸となって、原子力が持つ価値をワンボイスで発信していく必要があります。
 そして原子力産業の信頼を取り戻すには何よりも、安全性が確保された原子力発電所を着実に再稼働していくことが大事です。原子力発電所を実際に運転し、常により高い安全性を追求しながら、安全運転の実績を積み重ねていくことこそが、国民の安心や信頼に繋がると思います。

 原子力発電所の安全な運転や、運転終了後の廃止措置などを今後も進めていくためには、それを担う優秀な人材が不可欠であります。
 人材の確保・育成には、国をはじめ、各企業や大学、研究機関などの連携が重要である、との考えから、官民による「原子力人材育成ネットワーク」を構築しています。しかし、それをより効果的に機能させるには、ネットワークの司令塔が必要でございます。そのような方策の実現に向けて、当協会は国や関係機関と協力しながら活動を進めてまいります。

 当協会は、会員の皆様をはじめ、各地方の原子力懇談会など関係組織とも協力しながら、原子力の再生に貢献してまいる所存であります。
 最後に、皆さまのより一層のご支援ご協力を賜りますよう、お願い申し上げ、私の挨拶とします。ありがとうございました。

以 上

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