日本原子力産業協会 「原子力新年の集い」今井会長挨拶

2017年1月12日

日時:2017年1月10日(火)14:00~
場所:東京国際フォーラム ホールB7

皆さま、新年明けましておめでとうございます。

昨年のこの場で「2016年は、原子力発電所の再稼働本格化の年と位置付けたい」と述べたわけでございますけれども、原子力発電所全42基中、現時点で再稼働しているのはわずか5基――川内1、2号機、伊方3号機、高浜3、4号機――に留まっております。
このうち川内1号機は、10月に定期検査で運転を止めましたけれども、定期検査の終了後、再稼働をすることができました。鹿児島県知事は現実的な判断をなされたと思っております。

一方、大津地方裁判所の差し止め訴訟によりまして、再稼働した高浜3、4号機は運転停止を余儀なくされております。高度な専門性を要する原子力発電の分野において、国の決定が地方裁判所の判断によって覆されて、本当によいものでしょうか。
しかしながら、このようなことは今後も起こり得るケースであると考えますので、各電力会社さんにおかれましては、訴訟リスクに対してきちんと備えて頂きたいと思います。

この他にも40年運転の期間が迫っておりました美浜3号機、高浜1,2号機でも運転期間延長の認可が得られまして、再稼働の準備が整いました。
原子力規制委員会による審査は一定程度進んだと思いますけれども、引き続き効率性を重視して審査を進めて頂きたいと思っております。

地球環境問題でございますけれども、一昨年、COP21で温暖化ガス排出量の削減目標を決めました。即ち2030年の排出量を2013年に比べて、つまり17年間のあいだに26%削減することにいたしましたが、このためにはエネルギーミックスにおける原子力発電の比率を20~22%まで高める必要がございます。
しかし、その実現には、原子炉の40年超運転に加えまして、原子力発電所の新増設が欠かせないと思います。この新増設がなければ温暖化ガス削減の国際公約が守れないわけでございます。
そこで、本年策定予定の第5次エネルギー基本計画においては、国・政府はベースロード電源としての原子力発電の必要性と併せて、新増設の必要性についてもしっかりと明記して頂きたいと思っておるわけでございます。

さて、今年3月には福島第一原子力発電所の事故から6年を迎えます。避難指示解除が進むなど復興が一定の進捗を見せておりますが、未だ大勢の人が不自由な暮らしを強いられております。風評被害など、課題が残っていることを忘れてはなりません。

その福島第一原子力発電所に関しましては、昨年12月20日、「東京電力改革・1F問題委員会」という組織が「東電改革提言」を公表いたしました。
その内容を掻い摘んで申し上げますと、「廃炉」、「賠償」、「除染・中間貯蔵」に伴う必要資金がおおよそ22兆円に拡大する見通しとなったこと、そしてそれに伴って東電は3つの段階に分けて改革をしなければいけない、第1段階では送配電コストの改革、第2段階では柏崎刈羽原子力発電所の再稼働、第3段階では送配電・原子力における他社との共同事業体設立を目指すべき、としているわけでございます。

このいずれも大変なことでございますけれども、特に廃炉につきましては、原子炉から溶け落ちたデブリの取り出し、これは世界に例のない作業でありますので、大変なことでございます。
事業者は、国際的な経験や知見に基づきまして、福島第一原子力発電所の廃止措置を安全かつ着実に進めて頂くことが肝要だと思います。

話が変わりますけれども、原子力発電所インフラ輸出分野は日本の強みでございますが、日本メーカーは、これを国策として進めているロシア・中国との競争にさらされております。これに関しましては先月、英国での原子力発電所の建設プロジェクトに対しまして、日本政府が国際協力銀行、日本政策投資銀行等を通じました資金面での支援を行う方向で英国と調整を進める、との報道がございました。
こうした内容は非常に喜ばしいことだと思っております。しかしそれにも増して、日本原電が電力会社としてこのプロジェクトに参画致しておりまして、電気事業者とメーカーが手を携えて連携を進めてきた、こういうことでございます。これは大変に良いことだと思います。

このような例を引き合いに出すまでもなく、2020年から開始される発送電分離に伴う電力小売自由化本格化を控え、原子力業界全体の連携が、ますます重要になってきているように思います。個社の枠を超えた協力・提携を含め、業界全体を強化する取り組みが、進められることを希望しております。

一方、最近、安全・防災面では、政府・自治体・事業者間の協力関係が大きく進展いたしております。

例えば、自主規制に基づく安全対策につきましては、リスクを可能な限り低減させるべく、電力事業者が、お互いにピアレビューや、規制機関との密な対話を通じて、自ら積極的に取り組む動きが出てきております。

また、万が一の事故に備えた防災対策につきましては、昨年12月17日に、電力共通で設置した「美浜原子力緊急事態支援センター」が本格運用を開始致しました。
個別的に2,3申し上げますと、8月には西日本5社、すなわち北陸、関西、中国、四国、九州電力の5社による原子力事業相互協力協定が締結されました。
加えて9月には東北電力、東京電力による原子力災害相互協力協定が、さらに10月にはPWRを持つ4社、すなわち北海道、関西、四国、九州電力による、安全性向上を目指す技術協力協定が、それぞれ締結されました。

「事業」、「災害」、「技術」と付いておりますけれども、このように、安全・防災面での取り組みが先行しておりますが、経営・運営面での協力・連携も是非進めて欲しいと思います。今年こそ、原子力発電所再稼働の本格化の年と致しましょう。

当協会と致しましても、会員の皆様、会場においでの皆様のご支援を頂戴いたしまして、引き続き、原子力再稼働本格化に向け、最大限の努力をすることをお誓い申し上げまして、新年の挨拶とさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。

以 上

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