日本原子力産業協会 「2018年原子力新年の集い」今井会長挨拶

2018年1月12日

日時:2018年1月9日(火)14:00~
場所:東京プリンスホテル「鳳凰の間」
 
 皆さま、新年明けましておめでとうございます。今日は原子力発電の現状、地球環境と原子力、エネルギー自給と原子力、そして最後に原子力産業結集の必要性についてお話を致したいと思います。

 まず原子力発電所の稼働状況でございますが、昨年末、広島高裁が下した伊方3号機の運転差し止め仮処分の決定によりまして、昨年初めは5基動いていたところ、4基へと減少致しております。差し止めの仮処分決定は、2015年の福井地裁、2016年の大津地裁に続きまして、今回で3年連続となるわけでございます。非常に高度な専門性を要する原子力発電の分野において、またしても国の決定が、裁判所の判断によって覆されるということが起こりましたが、このようなことで本当に良いのでしょうか。現在、異議審において審議されているわけでございますが、正しい判断がなされることを心から期待しているところでございます。
 一方、原子力規制委員会による審査は、遅々としてではありますけれども、柏崎刈羽6、7号、大飯3、4号、玄海3、4号と、着実に進んでおります。特に、昨年末にはBWRの柏崎刈羽6、7号機が安全審査に合格致しました。これによってPWR/BWRどちらでも先例が出来ましたので、今後、原子力発電所の再稼働に弾みがつくということを期待している次第でございます。

 さて、地球温暖化の問題でございますが、COP21パリ会議で合意した温暖化ガス排出量の削減目標は、本年ポーランドで開催されるCOP24に向けて、詳細ルールを詰めてゆく見通しでございます。
 日本はパリ協定において、温暖化ガス排出量の中期削減目標を2030年までに2013年度比で、つまり17年間で26%削減すると宣言した訳でございますが、併せて長期的目標として2050年までに80%削減すると宣言したわけでございます。
 温暖化ガスの排出量を削減するには、再生エネルギーと原子力発電を、バランスよく最大限に活用する必要がございます。まず2030年に原子力で20~22%を供給するという中期目標を達成するには30基の稼働が必要となります。現在の原子力発電所の新増設の見通しが立たないことを考えますと、既存の原子力発電所の再稼働と共に運転期間の延長を最大限進める以外に、手段は有りません。
 さらに、経済産業省では、第5次エネルギー基本計画策定に向けて、現在2050年の長期目標も見据えた議論を行っているようでございますが、原子力発電所の再稼働・運転期間延長のみならず、新増設の検討を進めなければ、2050年にマイナス80%の目標は達成出来ません。その結果、日本が国際社会からの信頼を失いかねないわけでございます。 

 次に、エネルギー安全保障の観点から申し上げますが、昨今の世界情勢に鑑みますと、エネルギー安全保障の観点からも、原子力発電所の必要性は増していると思います。ご承知の通り、日本のエネルギー自給率は、わずか8%に過ぎません。太陽光発電や風力発電には時間的な制約がございますので、これら発電方式がベースロード電源とはなり得ない、そういう中で、日本は、国民生活の安定のためにも、原子力発電の比率を高め、国の安全保障に繋がるエネルギー自給率の向上を図る必要があると思います。
 そのように、原子力発電の必要性が、国民の中で根付くように、私共は業界一丸となって、さまざまな場所で理解活動を進めていかなければなりません。
 この点に関しましては、資源エネルギー庁における自主的安全性向上ワーキンググループでの議論がございまして、それを経て、これまで各組織に分散していた知見や人材などのリソースを集結して、事業者だけではなくメーカー等も巻き込みながら、業界横断的な課題に取り組む動きが出てきているようでございます。
 加えまして、自主的安全性向上の取組みなど、業界全体として発信すべき内容につきましては、国民への理解活動が着実に進みますように、効率的な発信方法を原子力関係団体が連携して検討する動きも出てきているわけでございます。
 私は、昨年のこの場におきまして、「原子力業界全体の連携が、ますます重要になっており、個社の枠を超えた協力・連携も含め、業界全体を強化する取り組みが、もっと進んで然るべき」と申しました。
 今後、只今申し上げましたような業界全体を結集する動きが、早急に実現されることを大いに期待しているわけでございます。

 当協会と致しましても、会員の皆様、会場においでの皆様のご支援を受けながら、原子力業界全体の連携強化の取り組みに積極的に関与し、また原子力発電所の再稼働に向け、最大限に努力することをお誓い申し上げて、新年の挨拶と致します。ご清聴、本当にありがとうございます。

以 上

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