日本原子力産業協会「原子力新年の集い」今井会長年頭挨拶

2020年1月9日

日時:2020年1月8日(水)11:30~
場所:東京プリンスホテル「鳳凰の間」

 新年明けましておめでとうございます。年頭にあたりご挨拶を申し上げます。

 福島の事故から今年は9年になります。この間、復興・再生へ向けた取り組みは着実に進展をして参りましたが、放射線への不安や福島の産品に対する風評被害など、取り組むべき課題は今なお残っております。原子力産業界の皆さまには、福島の更なる復興に向け、引き続きのご支援をお願い申し上げます。

 昨年は、日本を含め世界各地で数多くの異常気象による被害が発生し、気候変動に対する危機感は益々高まっております。異常気象の原因と思われる地球温暖化を防ぐためにも、二酸化炭素(CO2)を排出しない原子力発電の活用は必要不可欠であります。
 気候変動に関するパリ協定において、我が国は2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で26%削減すると宣言いたしました。この目標達成において、原子力発電は重要なベースロード電源として位置付けられております。しかしながら、昨年新たに稼働した原子炉はゼロで、現在9基しか稼働しておりません。今年は、数基が止まる可能性もあります。そうした中で、CO2削減の国際公約を実現するためには、2030年時点で30基程度の稼働が必要となります。残るプラントの再稼働とともに、今後10年の間に運転期限を迎えるプラントも出てくるため、40年を超える運転期間の延長も確実に進めていかなければなりません。
 こうした取り組みについては、個社での対応にも限界があります。原子力産業界全体の効率性や機動性を高めるためにも、原子力エネルギー協議会(ATENA)を中心に据えた、規制当局との対話が進展することを期待いたします。

 今年は、第6次エネルギー基本計画の策定に向けた議論が開始されると思われます。現行の第5次基本計画では、原子力依存度を低減するとし、原子力発電の新増設やリプレースへの言及はありませんでした。昨今の世界情勢を踏まえると、温室効果ガスの排出削減だけでなく、エネルギー供給・安全保障上も原子力発電の重要性は益々高まっております。原子力発電活用の意義をいま一度確認するためにも、政府には長期的な視点に立った、エネルギー・原子力政策の策定をお願いしたいと思います。

 資源の乏しい我が国では、原子燃料サイクルの確立が欠かせません。原子力発電から出た廃棄物を再処理し、取り出したプルトニウムを燃料として使うとともに、廃棄物の減容化、有害度の低減が可能です。六ヶ所再処理工場を早期に稼働させていただきたいと思います。
 高レベル放射性廃棄物の最終処分場については、数年前から国が直接前面に立ち、原子力発電環境整備機構(NUMO)と共に取り組みを進めておりますが、原子力産業界全体で支援していく必要があります。

 原子力に関する多くの課題解決と放射線利用を含む原子力技術の将来にわたる発展のためには、人材の確保・育成が急務であります。欧米では、小型モジュール炉等の次世代型原子炉の開発が進んでおりますが、こうした新たなプロジェクトには人材を惹きつける魅力があります。我が国でも原子力イノベーションの促進に向け、昨年「革新的原子力技術開発予算」が設けられ、補助金による支援事業が開始されました。国際的な潮流に我が国が取り残されることがないよう、イノベーション創出に向けた産官学の一層の連携が必要であります。
 また、技術開発の初期段階から規制当局に関与いただくことにより、事業者やメーカーの予見性の向上、効率的な審査が可能となります。革新的な原子力発電技術を結実させていくためにも、規制当局には早期から関与いただけることを期待いたします。

 将来にわたって日本のエネルギー供給を支えていくためには、原子力発電が欠かせません。このため、低炭素、長期的経済性、安定供給といった原子力発電が持つ価値を産業界全体で丁寧に伝え、国民の理解と信頼を得ていくことが必要であります。
 当協会といたしましては会員の皆様、会場にお越しの皆様のご支援を頂戴しながら、原子力産業界全体の発展に資する取り組みを、今後とも積極的に展開してまいります。特に次の3点、「地域・国民理解の促進」、「産業の活性化に向けた人材の確保・育成」、「国際協力活動の推進」に向け、最大限の努力をすることをお誓い申し上げ、新年の挨拶とさせて頂きます。

 ご清聴ありがとうございました。

以 上

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