日本原子力産業協会 今井会長 年頭挨拶

新年明けましておめでとうございます。日本原子力産業協会会長の今井でございます。
年頭にあたりまして、一言ご挨拶を申し上げます。

現在、世界では化石資源への投資低迷や、新型コロナによる経済停滞からの回復に伴って、エネルギー需給のひっ迫と価格の高騰が生じております。昨年2月から続くロシアによるウクライナ侵攻が、この傾向に更に拍車をかけると共に、エネルギー安全保障の観点からも安定したエネルギーの供給が各国の喫緊の課題となっております。また、いわゆる「1.5℃目標」の達成に向け、地球温暖化への対応についても、待ったなしの状況となっており、主要先進国を中心に、温室効果ガスの排出削減に向けた積極的な取り組みが求められているところであります。

こうした中、世界では原子力をエネルギー安全保障とカーボンニュートラルを同時解決できる「鍵」と位置付ける動きが顕著になっております。諸外国の例をみますと、英国やフランス、ポーランドなど、原子力発電所の増強や、新設を計画している国が多数ございます。また、国際エネルギー機関(IEA)が昨年出した報告書では、カーボンニュートラル達成のためには、2050年までに既存の原子力を倍増させる必要がある、と報告されております。原子力を積極活用すべきであることは、国際的には、もはや論を待たない段階にあり、これは我が国も同様であります。

これまで、我が国における原子力の活用方針は、長らく不透明な状態が続いておりましたが、昨年のGX実行会議において、政府が主導となり、ようやく新たな一歩を踏み出せたことは、大変評価すべきことであると思います。
特に、内容として
✓ 安全審査が完了した7基の再稼働に関する関係者の総力の結集
✓ 運転期間の延長など、既存原発の最大活用
✓ 次世代革新炉の開発・建設
✓ 再処理・廃炉・最終処分のプロセス加速化
これらについて、明確な道筋が示されたことは、非常に意義深いことであります。これを将来にわたって、確固たる方針とすることにより、産業界も自信をもって原子力事業への取り組みを前進させることが出来ますので、今後法制化などの国による環境整備が行われることを強く期待いたします。

一方、原子力が将来にわたって有効なエネルギー源として活用されていくためには、安心・安全へのたゆまぬ努力が必要不可欠であります。
福島第一原子力発電所の廃炉については、大きな進展があり、昨年7月にALPS(多核種除去設備)処理水の処分に係る計画が、原子力規制委員会に認可されました。今年春の海洋放出に向け、設備工事が進められておりますが、廃炉に向けた大きな一歩となるよう、関係者の皆さまには確実な工事の遂行と、引き続きの理解活動の推進をお願いしたいと思います。

また、六ケ所の再処理施設は、竣工に向けた山場がずっと続いております。核燃料サイクルは、プルトニウムを再利用することによって、原子力を我が国の準国産エネルギーとする極めて重要な事業です。資源の有効利用や、放射性廃棄物の減容化・有害度低減などにも大きく寄与いたしますので、再処理施設の確実な立ち上げが非常に重要となってまいります。昨年末、再処理施設の完成時期が改めて公表されましたが、確実な竣工に向け、関係者の総力を結集して対応いただきたいと思います。

将来にわたる原子力の持続的利用においては、高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する取り組みも大変重要な位置を占めています。北海道寿都町、神恵内村での文献調査が進んでいるところでありますが、日本全体で考えるべき課題であるため、官民が協力の上、こうしたプロセスが着々と進展していくことを期待しております。

さて、原子力は発電分野のみならず、放射線利用分野でのがん治療も含め、様々な可能性を秘めており、我々人類の持続的な成長に大いに貢献することができるものであります。当協会と致しましては、こうした原子力の広範な利用価値についても丁寧に説明し、国民の理解と信頼の獲得に努めて参りたいと思います。

最後となりますが、本年も、会員の皆さま、会場にお越しの皆さまのご支援を頂戴しながら、原子力業界全体の発展に資する取り組みを、積極的に展開していく所存でございます。
特に、「地域や国民理解の促進」「産業の活性化に向けた人材の確保・育成」「国際協力活動の推進」これらの取り組みに、最大限努力することをお誓い申し上げ、私からの新年のご挨拶とさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。

以 上

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