第25回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会における新井理事長発言内容

2022年3月28日

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 新井 史朗

2022年3月28日開催の第25回原子力小委員会において、エネルギーを巡る社会動向と原子力の技術開発について、新井理事長より専門委員として以下の発言を行いました。

  • 1点目として、社会のニーズに応える原子力の最大限活用について申し上げます。

世界的な脱炭素、脱化石燃料の潮流により、化石燃料の需給見通しが不安定化し、急激な価格高騰などをもたらしています。またウクライナへのロシア侵攻に伴い、欧州の脱ロシア依存による原油・天然ガスの供給不足が懸念されます。さらに国内では、先日、関東・東北地方において初の「電力需給逼迫警報」が発令されました。

こうした状況から、エネルギー供給面での安定性を補完するため、原子力の活用を期待する声は大きくなっています。ウクライナで原子力発電所がロシア軍に制圧された事から、原子力利用を懸念する声もありますが、政治状況とは独立して、国際原子力機関(IAEA)が原子力利用の安全が確保されるよう努めており、当協会を含め世界の原子力産業界はIAEAの取り組みを強く支持するものです。

我が国では、現時点で廃止措置にない原子力プラントが建設中を含め36基ありますが、これまで再稼働したプラントは10基に留まっています。原子力安全すなわちSを大前提に、3Eに優れる原子力が厳しいエネルギー情勢下で供給力として十分に貢献するよう、社会のニーズに応えられるよう、政府及び産業界は一致協力して、既存炉の早期再稼働、運転期間延長、また将来を見据えた新増設・リプレース等、原子力の最大限活用を図るべきと考えます。

  • 2点目として、サプライチェーンについて申し上げます。

原子力発電のサプライチェーンについて、建設が続いていた時期は、およそ9割が国内調達で技術が国内に集積している状況でした。しかしながら、2011年以降の運転停止継続や建設の中断により、サプライチェーンを構成する企業の離脱がみられている状況です。

「原子力の持続的活用」の観点から、高品質の機器製造、工事保守業務などの供給は必須であり、エネルギー自給率が重要であることと同様、これらが国内で一貫して行われることが重要です。サプライチェーンの技術・技能維持、人材確保・育成は、企業の設備投資や人材の新規採用が大前提であり、その為には関連産業の長期的展望が開けている事、すなわち既存炉の徹底活用と新増設・リプレースの明確な見通しが示される必要があると考えます。

  • 3点目として、技術開発について申し上げます。

国内の原子力関連企業や日本原子力研究開発機構(JAEA)等が、それぞれの戦略で技術開発を実施しており、より安全性を高めた大型炉から海外企業と共同で推進する革新炉まで、選択肢の幅が広がりつつあります。その中には既に海外で許認可のフェーズにある小型炉もあり、それぞれの実用化時期を踏まえて導入検討がなされるものと思われます。

21世紀後半に本格的な利用が期待される高速炉や、その後の核融合炉等の革新的技術開発についても、実現までの時間軸を意識しつつ、限りあるリソースをどう活用していくのか議論・整理が必要です。さらにこのような革新炉の取り組みが、サプライチェーンを含めた技術の維持発展、人材確保・育成に資するという視点も大切と考えます。

以上

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<参考>

第25回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会(経済産業省HP)

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