2019年の年頭にあたり

2019年1月7日

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 高橋 明男

 新年明けましておめでとうございます。
 我が国のエネルギー政策の基本となる「第5次エネルギー基本計画」が昨年7月に閣議決定され、原子力は引き続き重要なベースロード電源と位置付けられました。また、昨年末にはCOP24がポーランドで開催され、パリ協定を運用する実施指針が採択されました。原子力発電は電力を安定供給するベースロード電源としても地球温暖化対策としても大きな役割を期待されていますが、その役割を果たすためにも社会の信頼獲得に努めなければなりません。
 2019年の年頭にあたり、当協会の本年の取り組みについて4点述べたいと思います。

<原子力発電に対する理解の促進>
 原子力に対する社会の理解を得るためには正確でタイムリーな情報発信が欠かせませんが、社会の価値観が多様化しエネルギーへの関心や情報入手手段も様々である中で、社会の動静を見ながら常に発信内容、方法については工夫しなければなりません。当協会はウェブサイトやメールマガジン等を通じて情報発信を行っていますが、これらの表現方法にも工夫を凝らしていきたいと思います。
 また、発信した情報はわかりやすくなければなりません。プレスブリーフィングやホームページの解説記事の充実により、わかりやすい説明に努めてまいります。
 一方的な情報発信だけでは理解は進みません。これまで以上に対話活動に注力する必要があると考えています。これまで当協会が築き上げてきた地域や大学などのネットワークを活用し対話活動を充実させてまいります。
 こうした取り組みは当協会だけでは難しく、関係団体や事業者をはじめとする産業界と協力し効果的、効率的な情報発信に努めてまいります。

<福島復興支援>
 福島第一原子力発電所事故から約8年が経過しますが、福島県内の避難者数は昨年1年間で約1万人減少したものの、未だ約43,000人の方が避難をしておられます。昨年は福島第一原子力発電所事故後の支援拠点であったJヴィレッジが営業を再開し、今年5月には発電所の立地自治体の1つである大熊町の新庁舎での業務開始が予定される等、福島復興は着実に進捗しています。そうした中で当協会も自治体に寄り添いながら、もう一歩先の復興に向けて協力してまいりたいと思います。
 一方で福島県産品に対する風評は国内外に根強く残っており、当協会としても福島県産品の安全性の理解に向け、科学的裏付けのあるデータを発信する等、風評払拭の一助となるよう努めてまいります。
 福島第一原子力発電所では中長期ロードマップに従い廃止措置が進められており、今年は3号機の使用済燃料の取り出しが期待されますが、トリチウムを含む浄化水の処理が大きな課題となっています。昨年には、浄化水の処理について公聴会が行われました。当協会も対話活動などを通じ、海洋放出の影響について理解が進むよう説明してまいりたい。

<国際協力>
 福島第一原子力発電所事故後も世界では原子力発電の導入、拡大が進んでおり、日本の高品質な原子力技術には海外から高い期待が寄せられています。原子力技術の海外輸出を通じ、世界の原子力平和利用に貢献するとともに、停滞する国内の原子力産業が活性化し原子力技術の更なる向上や国の成長戦略に寄与していくことが望まれます。
 当協会では、アジア近隣諸国や欧米諸国との2国間会合やビジネス交流イベントを開催し、原子力安全の一層の向上と会員企業と海外の産業界との交流を図っています。
 こうした海外諸国とのネットワークを活かし、福島の状況の情報発信や日本の原子力産業の国際展開に資する取り組みを進めてまいります。

<人材確保・育成>
 原子力発電はプラント建設から廃炉、フロントエンドからバックエンドまで幅広い分野で長期にわたり継続的な人材育成が欠かせません。我が国には産官学78の機関が参加する「原子力人材育成ネットワーク」があり、これまで人材育成にかかわるロードマップの作成や情報共有等を行ってきました。しかしながら、各機関が整合性をもって人材育成を効果的、効率的に推進するためには戦略が必要であり、その策定機能を担える組織へと4月に改組することとしています。当協会はネットワーク事務局の一端を担っており、その役割を果たしてまいります。
 また、少子化の中で原子力産業に携わる人材を確保することが難しい状況にありますが、一人でも多くの志のある学生に原子力産業界に入ってほしいと願っています。小型モジュール炉(SMR)等、次世代炉への期待も高まっており、夢とやりがいのある、社会へ貢献できる産業であることを知ってもらう活動を関係機関と協力して取り組んでまいります。

 当協会は会員の皆さまとともに、諸課題の解決に向けた取り組みを進めてまいりますので、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

以 上

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