2022年6月7日 原子力委員会 第22回定例会議での新井理事長説明内容

2022年6月13日

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 新井 史朗

当協会は、2022年6月7日開催の原子力委員会において、「原子力利用に関する基本的考え方」に関する意見として、「原子力産業界の現状と課題」と題して以下の観点から説明を行いました。

  1. 原子力発電に係る動向
  2. 原子力発電事業基盤の状況
  3. 人材の確保・育成

【原子力産業界の現状と課題(原子力委員会第22回定例会議)】
 原子力産業の現状と課題 (日本原子力産業協会発表資料)

1. 原子力発電に係る動向

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  • 海外と日本では原子力産業の動向に大きな差。海外では2050年カーボンニュートラル実現(CN2050)に向けて、国際機関や原子力先進国が原子力の積極導入を唱え、仏14基、英8基、更に米国でも80年運転期間延長を進めており、そのための事業環境の整備も行っている。
  • 一方、国内では福島第一原子力発電所事故以降、再稼働は未だ10基にとどまり、CN2050が表明され第6次エネルギー基本計画に原子力の持続的活用が記載されるも、サプライチェーンや人材の点で課題が多い。

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  • CN2050に向けて、3Eに優れる原子力は最大限活用すべき。そのために、まずは原子力の早期再稼働と運転期間延長が必須で、将来的には新増設、リプレースを検討する必要がある。
  • それがサプライチェーン維持、人材確保・育成、技術基盤の維持強化には必須である。

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  • 原子力発電所の現状について、現在、安全審査申請中の既設25基のうち、再稼働を果たしたのは10基のみで、早期再稼働が必要であるものの先行きは不透明である。

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  • 今後の原子力発電設備の見通しについて、60年運転を実現できたとしても、2040年代以降急激に設備容量が減るため、新増設・リプレースに向けた準備が必要である。
  • 国民の理解、投資回収予見性、技術開発、技術・技能の伝承、人材育成が急務である。
2. 原子力発電事業基盤の状況

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  • 原子力発電事業基盤の状況について、原子力事業には幅広い業種が貢献しており、売上高で1.9兆円、従業者は8万人。そのうち発電所の工事を担当する会社の従業員は3.3万人である。

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  • 当協会が昨年行ったアンケート調査で、サプライチェーン企業の半数が2010年度比「売上減少」と回答、その理由の過半が「発電所停止の影響」である。

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  • 原子力発電所の長期停止により、回答を寄せた会社の過半が「売上げの減少」、「技術力の維持・継承」の影響を受け、また技術面でほとんどが「OJT機会の減少」に直面している。

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  • 原子力主要6メーカーの原子力部門における配属状況は、2010年以降原子力発電所の長期停止で減少している。製造業における原子力関係研究開発費も減少。人、投資ともに厳しい状況となっている。

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  • プラントメーカーにおけるプラント建設経験者の割合は、多くがここ10年で定年を迎え経験者の数が急激に減少する。
  • 20代後半の職員も6年間で約180名減少し、このままでは技術の伝承が困難になる状況。
3. 人材の確保・育成

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  • 日本原子力産業協会(以下、当協会)では、人材の確保・育成の取組として、原子力産業界の人材確保支援と学生への原子力産業への理解促進および情報提供を目的に、毎年「原子力産業セミナー」を開催。昨年10月には東京と大阪において対面とWeb形式で開催した。

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  • 原子力産業への就職を考える学生は、福島第一事故以降激減し、増加しない傾向にある。内訳をみると、原子力、エネルギー系以外の理工系の学生の原子力離れが顕著である。
  • 原子力発電所は原子力、エネルギー系の人員だけで建設できるものではないため、総合的な人材の不足も懸念される。

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  • 当協会は、産官学で連携し効果的な人材育成を行う「原子力人材育成ネットワーク(人材NW)」を推進し、共同事務局を務めている。参加84機関は、ここで策定された「ロードマップ」を参照し、様々な人材育成活動を実施している。

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  • 人材NWは、運営委員会の下、戦略ワーキンググループ(WG)と5つの分科会で構成されている。

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  • 「戦略WG」では、人材育成における各分野の戦略目標の取り纏めとフォローアップを行っている。
  • サブWGを設置し、2014年策定のロードマップのアップデートを進めている。

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  • 国内外で活躍できる人材の育成と新規導入国の人材育成に関して、IAEAと共催で「原子力エネルギーマネジメントスクール」を開催している。2021年度は9月にオンラインで開催した。
  • 当協会では、国際的に活躍できる若手リーダーの育成を目的とする「向坊隆記念国際人育成事業」において、世界原子力大学(WNU)の夏季研修への参加費助成を行い、会員組織の社員を派遣している。今年はスペインで開催、2023年夏には日本で開催する。

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  • 当協会では各地の大学、高専等においてエネルギー・地球環境、原子力発電等に関する情報を提供する出前講座を行っている。2005年の開始から延べ476回開催し、延べ23,747名の方にご参加いただいている。

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  • 当協会では、原子力の理解促進に向けた新たな取組みとして、「原子力発電 THE ボードゲーム」を制作した。
  • 中学生から大人まで幅広い年代が楽しみながら原子力発電に係る知識を深め、原子力発電へのポジティブなイメージを持ってもらえるよう、安全対策を題材としたボードゲームで、新聞記事が掲載されたところ、多くの方々から問い合わせが寄せられている。

当協会は、サプライチェーン、人材、技術など産業基盤の維持・強化という原子力産業界の課題に対応してまいりたい。

以上

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