川内原子力発電所1号機の再稼働にあたって~基本に立ち返り、国民と共に~

2015年7月14日

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 高橋 明男

現在、九州電力㈱川内原子力発電所1号機は設置変更許可、工事計画認可そして保安規定が認可され最終段階といえる使用前検査が行われている。先日、燃料装荷が完了し、いよいよ再稼働が目前というところまできた。
2013年7月に新規制基準が施行されると同時に5発電所10基が適合性審査を申請してから実に2年の月日が経った。予想以上の長い時間がかかったものの、安全に妥協なく審査対応を行ってきた規制当局と事業者に改めて敬意を表したい。

(都度立ち止まって確認を)
新規制基準の施行後、初めての再稼働ということで、多くの国民が川内1号機の作業に注目している。
川内1号機は、福島第一原子力発電所事故直後の2011年5月以来、約4年に亘る停止が続いている状況である。もちろん長期停止に伴う必要な保全措置は取ってきているであろうが、これだけの期間、プラントを全く稼働しない状況は、あまり経験していないものと思う。特に運転中は非常に高温、高圧になる蒸気系統等では、実際に起動して初めて長期停止の影響が顕在化する事象もありうるとの意識を常に持ち、より慎重に取り組まなければならない。
また、設備だけではなく運転、保守など人的な面でも、シミュレータによる訓練などは継続して行っているが、実機での運転から遠ざかっていたことは事実である。さらに今回は新規制基準に基づくシビアアクシデント対策、安全性向上を目的に新たに設置された設備も多くある。万が一の際にしっかり使いこなすことができるよう訓練を積み重ね、自信を持って日々の運転、作業に取り組めるよう努力していただきたい。
こうした中、関係者には失敗は許されない、工程通りに成し遂げねばならないという意識が強いと思うが、何かあれば立ち止まって確認するという当たり前のことを積み重ね、綿密な報告・連絡・相談、指差呼称といった基本に立ち返って安全最優先の対応をお願いしたい。

(情報・経験の共有を)
川内1号機を円滑・確実に再稼働させるにあたり、原子力事業者には一丸となったバックアップを引き続き実施していただきたい。かつて2012年7月に関西電力㈱の大飯発電所3,4号機が暫定基準のもとで再稼働した時は1年3か月ぶりの起動であった。同じPWR炉である大飯の経験を共有することは価値があろう。
さらに型式が異なるBWRプラントを含め、全ての原子力事業者に対しても川内の対応状況、チェックポイント、体制などの情報を共有・水平展開することで今後の再稼働作業を効率的に進めることができるだろう。さらにはこれらを積み重ねることで、一層の安全性向上につなげなければならない。

(コミュニケーションの在り方)
現場では安全を最優先に考えることはもちろんだが、それだけではいけない。地域住民をはじめ、広く国民の理解と安心、安全のためにも積極的な情報発信が欠かせない。これまでのような、事故は起きないとの説明でなく、住民の方々の不安や疑問に一つひとつ答え、予想されるトラブルやその影響、そして対策をあらかじめ周知するなど、一層の双方向性を持ったリスクコミュニケーションの充実を図り、原子力発電に対するご理解を深めていただける環境作りに努めていかなければならない。

再稼働にあたり、ここまで来られたのは事業者自身の努力は言うまでもないが、規制当局をはじめ、安全性向上のための工事を昼夜を問わず施工して下さった協力会社の方々、さらには再稼働に対してご理解をいただいた地域の皆様のおかげであることを忘れてはならない。現場で作業にあたる方々の緊張感は相当なものであろうが、関係する皆様への感謝の気持ちを持って、是非とも、もう一踏ん張りしていただきたい。そして、確実に再稼働を成し遂げ、次へとバトンをつなげていただきたい。
将来にわたり、原子力に与えられた役割を果たしていくために、事業者は事故の経験を改めて見つめ直し、規制基準をクリアすることで満足せず、さらなる高みを目指すことはもちろん、そうした取り組みや変革の姿を地元をはじめ広く国民に見せていかなくてはならない。
再稼働はゴールでなく新たなスタートである。共に歩むという姿勢が大事であり、そうした積み重ねが、理解と信頼につながるであろう。安全の最優先はもちろんのことだが、地元をはじめとする国民の皆様との双方向のコミュニケーションを取り、歩調を合わせて進めていただきたい。

以上

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