将来の廃炉を担う技術開発や人材育成に期待する~若い世代に関心を持ってもらうための取組み~

2016年12月14日

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 高橋 明男

 東京電力福島第一原子力発電所では、現在廃炉に向けた作業が進みつつある。しかし、廃炉作業は30~40年程度かかるものであり、着実に遂行するためには中長期的な人材育成と新たな技術開発が欠かせない。それには若い世代にまず福島第一の現状や廃炉に関心を持ってもらうことが必須となるが、これに関して先頃歓迎すべき2つの事例があった。

 1つ目は、12月3日、廃炉に必要な技術基盤を確立するため今年度から本格運用を開始した福島県の楢葉遠隔技術開発センターにおいて、全国の高等専門学校生を対象とした第1回廃炉創造ロボコンが開催されたことである。これは福島第一の廃炉作業を念頭に、実際の現場を模した会場でチームごとにロボットを遠隔操作し、所定の課題をクリアするためのアイデアと技術を競うもので、地元の福島高専が中核的役割を担い、全国から13校15チームが参加した。
 本ロボコンの主な目的として、学生にロボット製作を通じて廃炉に興味を持ってもらうことが挙げられており、さらに今回若い世代を対象としたコンテストが開催されたのは画期的なことであり、関係された方々に敬意を表する。
 コンテストは福島第一の原子炉建屋を想定して過酷な条件設定のもとで実施されたこともあり、本番では多くのチームが所定の課題に苦戦を強いられた。実際のロボット製作の困難さをあらためて認識する結果となったわけだが、そもそもモノづくりや技術開発は簡単なものではない。まずは廃炉への関心を高めつつ、困難な課題に果敢にチャレンジする姿勢が大切である。
 本ロボコンは来年も同じ課題で開催されることが決定している。各校とも今回の経験を糧とし、後輩にも志を引き継ぎつつ、次回もぜひ既成概念にとらわれない斬新かつ豊かな発想でチャレンジをしていただきたい。それが出来るのは若者の特権でもある。
 「優れたアイデア・技術については現場への適用可能性を検討する」とされているため、本ロボコンが次回以降も優れた発想の創出の場となり、将来廃炉の現場で実際に活かせる革新的な技術開発につながることを期待したい。

 2つ目は、11月に県立福島高校の生徒が事故後初めて高校生として福島第一の現場を見学したことである。同校では事故後、校内の放射線量を測定しフランスの高校との交流活動で結果を発表するなど独自の取組みを実施しており、今回の見学も生徒からの強い要望によるものだという。
 現在、福島第一構内のほとんどのエリアでは環境改善が進み、防護服もマスクもなしで移動が可能だが、そのような実態は残念ながら社会に広く正しく伝わっているとは言いがたい。同校の生徒がそうした現状に関心を持ち、自らの目で事実を確認して国内外に伝えようとする姿勢には頭が下がる思いである。事故後、内規に基づき18歳未満の見学を受け入れていなかった東京電力も、今回の見学を機に若い世代の見学を積極的に受け入れる意向を示しており、今後さらに多くの若い人達が実際に福島第一の現場を見て理解を深める機会が増えることを願う。

 福島第一の廃炉には負のイメージがつきまといがちだが、これは世界的にも前例のない、国内外の英知を結集して取組むべきテーマであり、夢とやりがいのある挑戦だといえる。多くの若い世代が福島第一の現状や廃炉に関心を持つこと、さらにロボコンのような取組みが継続的に実施されることが、廃炉の着実な遂行を担う技術の開発や人材の育成に寄与することを期待する。

以 上

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