近畿大学原子炉の教員向け研修会の再開に寄せて

2017年8月25日

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 高橋 明男

 新規制基準対応に伴い一時中断していた教員のための「原子炉実験・研修会」が4年ぶりに近畿大学で再開されたことを受けて、7月及び8月に開催された研修会に当協会の職員を派遣し見学させていただいた。
 この研修会は熱出力1Wの近畿大学教育・研究用原子炉を用いて、公募で集められた学校教員約15名が参加する研修を夏休み期間に4回実施するものである。今回は中学理科教員のほか、小学校、高校、高等専門学校の教員も参加し、担当教科も技術・家庭、社会、数学など幅広い分野の方々が「放射線に関して知識を深めたい」などの思いを持って臨んだ。
 2日間の研修は5つの講義(保安教育、原子炉の基礎、放射線の基礎知識、放射線の利用、放射線の健康影響)と4つの実習(原子炉運転、中性子ラジオグラフィ、環境放射線の測定、放射線の性質)等から構成されている。
 参加教員は近大原子力研究所の教官から直接原子力や放射線についての詳しい講義を受け、また、制御盤を操作して原子炉を運転し臨界状態を作り出したり、エックス線や原子炉から出る中性子を使って透過像を撮影したり、キャンパス内の様々な場所の放射線を自分で測定したりという実体験を伴う実習に取組んだ。終了後には「炉心を近くから観察できることに驚いた」「制御棒を自分で操作してみて原子炉の仕組みが理解できた」「実際に測定することで身の回りの放射線を実感できた」「貴重な経験を持ち帰って多くの教員や生徒に伝えたい」などの声が聞かれた。

 2008年度に学習指導要領が改定され、教育現場では約30年ぶりに中学3年生の理科で「放射線の性質と利用」について教えることになった。学校で放射線を学んだことがない教員も多いなかで、測定や利用を通して身をもって放射線を知ることができる研修会は大変貴重な場である。より多くの教員の方々にこの研修会を知っていただき、積極的に参加していただきたい。
 また、一つの原子炉施設が提供できる研修の機会は限られているため、他の施設にも教員向けの研修や体験の受入れが広がっていくことを期待する。
 当協会は引き続き原子力産業界とともに放射線教育の充実に向けた取り組みを支援してまいりたい。

以 上

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