国際機関等における日本の貢献について

2019年1月24日

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 高橋 明男

 ますますグローバル化する現代において、国際協調は欠かせず、先進国である日本には国際社会への貢献が求められている。こうした活動は単なる貢献にとどまらず、日本が学ぶべき事も多く、日本のプレゼンスを高めることにもなる。しかし、国連関係の国際機関における日本の人的貢献は、分担金などを通じた財政的貢献に比べて低いことが予てから指摘されている。

 原子力関連では、国際原子力機関(IAEA)における2017年の日本の予算分担率は9%強(約44億円 (*1) )と世界で2番目でありながら、専門職以上の日本人職員数は3%弱(38人)と14番目に留まっている。また、国連の機関ではないが、7極 (*2) が参加する国際核融合エネルギー機構(ITER機構)における日本の分担率は約9.1%(2018年は約40億円)であるが、専門職員数は4.3%(25人)(*3) で6番目である。

 外務省はIAEAの公募対象の空席ポスト情報を早期に把握し、国内企業等に紹介しているほか、同省国際機関人事センター (*4) や原子力人材育成ネットワーク (*5)等でも応募者増に向けて取り組んでいる。また、ITER機構では職員の公募やインターンシッププログラムの実施の他、近年には企業等に在籍しながら最長で4年間派遣できるプログラム (*6)を導入するなど、受け入れ側の環境整備も行われている。しかしながら、現状ではこれらが期待したほどの効果に結びついていない。

 他方、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)のように現在日本人職員が重要ポストに就いている組織であっても、如何に継続して同ポストを確保していくかが課題となっている。

 日本人職員が増えない理由として言語の障壁が挙げられるが、国際機関等への社員派遣の有益性に関しての企業の理解や、意欲ある優秀な人材が活躍の場を海外に求めるにあたっての支援体制を整えることも必要である。

 原子力関係の国際機関への職員派遣は、日本が得た教訓や知見を各国と共有することで、原子力の一層の安全性向上につながる重要な国際貢献である。また、異文化環境のなかで多国籍の人々と協働することで派遣者個人のスキルアップや人的ネットワーキングが期待でき、このような経験を積んだ人材が帰国し活躍することは、日本の原子力にとって有益である。

 今後とも日本が国際社会に貢献し、我が国のプレゼンスを向上させていくためには、国際機関等の日本人職員を増やし、より重要なポストを獲得していくことが重要であり、それには産官学連携して長期的な戦略を立てて取り組む必要がある。原産協会としても当協会の幅広いネットワークの活用や原子力人材育成ネットワーク等を通じて協力して参りたい。

以 上

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(*1) 1ユーロ128円で換算。以下同じ。
(*2) 日本・欧州連合(EU)・ロシア・米国・韓国・中国・インド。
(*3) 2018年12月末現在。
(*4) 外務省国際機関人事センターは、国際機関の空席情報の提供、若手日本人(JPO)派遣制度の実施、
  国際機関キャリア・ガイダンスの開催などを実施している。
(*5) 原子力人材育成ネットワークでは、IAEAの空席情報等を提供している。
(*6) ITERプロジェクトアソシエイツ(IPA)

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