「制度検討作業部会第二十二次中間とりまとめ(案)等」に対するパブリックコメント(意見募集)への意見提出について
2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、「再生可能エネルギーと原子力を共に最大限活用していくことが極めて重要となる」と記載されるとともに、「電力システム改革によって競争が進展した環境下においても大規模かつ長期にわたる投資、事業期間の長さ、規制基準、バックエンド事業といった原子力事業の特徴も考慮し、安定的に事業運営できるような事業環境の整備が必要である」とされています。
これまで原子力発電の事業環境整備は、政府の複数のエネルギー関連会議で審議されてきましたが、投資回収の予見性を高め新たな投資を促進するための制度に関しては、「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 制度検討作業部会」において審議されてきました。
この審議結果をとりまとめ、長期脱炭素電源オークションガイドラインの改定を行うにあたり、2025年6月25日、経済産業省資源エネルギー庁は「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 制度検討作業部会 第二十二次中間とりまとめ (案)等」に対する意見募集(パブリックコメント)を開始しました。
これに対し、本日、当協会は以下の通り意見を提出しました。
「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 制度検討作業部会第二十二次中間とりまとめ(案)等」に対する意見
- 第7次エネルギー基本計画と長期脱炭素電源オークションの募集条件の整合について
- 既設の原子力電源の安全対策投資案件の第3回募集量は、前回の200万kWから150万kWに減少させることとされているが、既設炉の最大限活用の観点から、この上限を拡大していただきたい。
- 事業者に帰責性がない費用増加*が発生した場合に発動される制度的対応について
- 事業者に帰責性がない費用増加が発生した場合に発動される制度的対応の対象要件に、既設炉の最大限活用の観点から、既設原子力発電の安全対策投資を含めていただきたい。
- 事業者に帰責性がない費用増加が発生した場合に発動される制度的対応の対象要件に、次世代革新炉への投資促進の観点から、送電端設備容量ベースで30万kW未満の次世代革新炉も含めていただきたい。
- 事業者に帰責性がない費用増加が発生した場合に発動される制度的対応には、事業リスクの予見性向上の観点から、上限(当初見積もりの1.5倍まで)を設けないでいただきたい。
*法令に基づく規制・審査、行政指導への対応に伴い、事業者にとって他律的に発生する費用であり、発電事業者があらかじめ見積もることが困難であった費用 (第二十二次中間とりまとめ28ページ2行目)
- ペナルティの適用について
- 導入リードタイムの長い電源では、その間に種々の事情変更が発生する蓋然性が高まることから、供給力提供開始期限の5年前までの申告を条件に、同期限の合理的な範囲での延長を認めていただきたい。
- 事業者に帰責性のない事象に伴う供給力提供開始の遅延発生(供給力提供開始期限の超過)の場合は、容量契約確保金額を容量収入として得られる期間を短縮しないでいただきたい。
- 事業者に帰責性がなく発生する長期停止にはペナルティを課さないでいただきたい。
- 事業者の自主的安全性向上の対策の実施にかかる取扱いについて
- 自主的安全性向上の対策の実施により発生する費用の増加を「事業者に帰責性がなく入札後にコストが増加した場合の対応」に含めていただきたい。
- 自主的安全性向上の対策の実施により供給力提供開始の遅延(供給力提供開始期限の超過)が発生する場合、容量契約確保金額を容量収入として得られる期間を短縮しないでいただきたい。
- 自主的安全性向上の対策の実施による長期停止には、供給力の維持ペナルティを課さないでいただきたい。
- 資金調達コストの低減について
- 資金調達コスト低減、電気料金の低減の観点から、建設期間中から投資回収できる仕組みを導入していただきたい。
以上
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<参考:意見提出用紙への記入内容>
「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 制度検討作業部会 第二十二次中間とりまとめ(案)等」に対する当協会の意見
意見1.①
該当箇所
(第二十二次中間とりまとめ(案) P16、P19)
③募集量
「既設原発の安全対策投資」については、第2回では落札容量が315万kWとなり、募集上限200万kWを大きく上回ったことを踏まえ、第3回では募集上限を150万kWに減少させることとした。
意見内容
既設の原子力電源の安全対策投資案件の第3回募集量は、前回の200万kWから150万kWに減少させることとされているが、既設炉の最大限活用の観点から、この上限を拡大していただきたい。
理由
- 第7次エネルギー基本計画において既設炉の最大限活用が記載され、「2040年度におけるエネルギー需給の見通し」では原子力発電が総発電量の2割程度を担うことが期待されている中、既設の原子力電源の安全対策投資案件が、競争力があるにもかかわらず、設定された募集上限枠で落選する懸念がある。
意見2.①
該当箇所
(第二十二次中間とりまとめ(案) P27、28、29)
(c)事後的な費用増加への対応
対象:(中略)新設・リプレース投資
意見内容
既設炉の最大限活用の観点から、事業者に帰責性がない費用増加が発生した場合に発動される制度的対応の対象要件に、既設原子力発電の安全対策投資を含めていただきたい。
理由
- 現行の長期脱炭素電源オークション制度および第二十二次中間とりまとめには、既設原子力発電の安全対策投資案件の事後的な費用の増加に対応する制度がない。
- 新設・リプレースと同様に、投資金額が高額になることから、事後的な費用増加のリスクを有しており、本項制度措置の対象としていただきたい。
意見2.②
該当箇所
(第二十二次中間とりまとめ(案) P27、28、29)
(c)事後的な費用増加への対応
対象:(中略)(建設費の多くが千億円以上となる水準である)対象kWの送電端設備容量ベースで30万kW以上の大型電源の新設・リプレース投資
意見内容
事業者に帰責性がない費用増加が発生した場合に発動される制度的対応の対象要件に、次世代革新炉への投資促進の観点から、送電端設備容量ベースで30万kW未満の次世代革新炉も含めていただきたい。
理由
- 第二十二次中間とりまとめでは、事後的な費用増加の対応についての制度措置の対象は送電端設備容量30万kW以上とされており、次世代革新炉であっても、30万kW未満では、制度的対応がない。
- 現在、開発が急速に進んでいる小型モジュール炉では、建設費が1000億円を超える高額な投資になる可能性があるため、30万kW未満の次世代革新炉も対象要件に含めるべきである。
意見2.③
該当箇所
(第二十二次中間とりまとめ(案) P27、28、29)
このため、事後的な費用増加の落札価格への反映は、建設費は当初応札価格に織り込んだ建設費(予備費を除く。運開後は建設工事デフレーター補正後)の1.5倍を上限とし、運転維持費は当初応札価格に織り込んだ運転維持費(申請時点の最新の自動補正後)の年間あたり費用の1.5倍を上限とした。
意見
事業者に帰責性がない費用増加が発生した場合に発動される制度的対応には、事業リスクの予見性向上の観点から、上限(当初見積もりの1.5倍まで)を設けないでいただきたい。
理由
- 第二十二次中間とりまとめにおける、事後的な費用増加の制度的対応は、「法令に基づく規制・審査、行政指導への対応に伴い、事業者にとって他律的に発生する費用であり、発電事業者があらかじめ見積もることが困難であった費用」すなわち事業者に帰責性がない費用の増加が対象であり、かつ、モラルハザード対策として1割を自己負担するため、1.5倍の上限は不要と考える。
意見3.①
該当箇所
(第二十二次中間とりまとめ(案) P45)
⑥リクワイアメント・ペナルティ等
意見
導入リードタイムの長い電源では、その間に種々の事情変更が発生する蓋然性が高まることから、供給力提供開始期限の5年前までの申告を条件に、同期限の合理的な範囲での延長を認めていただきたい。
理由
- 導入リードタイムの長い電源の原子力では入札段階で決定した運転開始時期には不確実性がある。このため建設準備ならびに建設工事を計画的かつ安全に進めるため、帰責性にかかわらず当初の運転開始の5年前までに事業者が申請することにより、運転開始期限を超えて運転開始しても、ペナルティの対象とせず、見直しができることが必要である。
- 一方、原子力発電の新規建設には、サプライチェーンの維持・強化ならびにそれを支える人材確保と育成が必須である。厳しいペナルティの回避を理由に事業の意思決定が遅れた場合、サプライチェーンや人材などにネガティブな影響が産業大に及ぶ恐れがあるため、配慮をお願いしたい。
意見3.②
該当箇所
(第二十二次中間とりまとめ(案) P45)
⑥リクワイアメント・ペナルティ等
意見
事業者に帰責性のない事象に伴う供給力提供開始の遅延発生(供給力提供開始期限の超過)の場合は、容量契約確保金額を容量収入として得られる期間を短縮しないでいただきたい。
理由
- 容量確保契約金額を容量収入として得られる期間を短縮するペナルティは、建設コストの大きい原子力では高額の減収が生じ、事業に深刻な影響を生じる懸念があるため、事業者に帰責性のない事象に伴う遅延の場合には、容量収入が得られる期間を短縮するペナルティを削除する制度的対応を検討していただきたい。
意見3.③
該当箇所
(第二十二次中間とりまとめ(案) P45)
⑥リクワイアメント・ペナルティ等
意見
事業者に帰責性がなく発生する長期停止にはペナルティを課さないでいただきたい。
理由
- 固定費の割合が大きく契約容量の大きい原子力では、長期停止にともなうペナルティによる収入減少が高額にのぼるため、その負担が経営に与える影響は大きい。
- また、事業者に帰責性がなく発生する長期停止の上限(180日相当)の設定については合理的でない。大幅な収入減少が生じないような、ペナルティ基準の設計ならびに制度的な措置を検討いただきたい。
- 具体的には、事業者に帰責性がなく発生した長期停止期間は停止の上限である180日相当にはカウントしないでいただきたい。
- また、ペナルティの支払い時期の猶予を設けるなど、急激な経営への影響を緩和する制度措置をお願いしたい。
意見4.①
該当箇所
(第二十二次中間とりまとめ(案) P27、28、29)
(c)事後的な費用増加への対応
発動基準:「法令に基づく規制・審査、行政指導への対応に伴い、事業者にとって他律的に発生する費用であり、発電事業者があらかじめ見積もることが困難であった費用」が入札後に大幅に増加し、事業者から申請があった場合
意見
自主的安全性向上の対策の実施により発生する費用の増加を「事業者に帰責性がなく入札後にコストが増加した場合の対応」に含めていただきたい。
理由
- 原子力利用は、安全性の確保が大前提であり、事業者は、規制基準に適合することにとどまらず、常に安全性の高みを目指した取り組みを継続していくことが求められている。
- 現行制度では、自主的な安全性向上対策に関する費用について、入札後に発生した場合には事業者の持ち出しとなり回収ができない仕組みとなっている。
- これらの費用の回収を認め、事業者やサプライチェーンからの自主的安全性向上に対する新たな提案や取組みの実施が積極的に起こるような制度にしていただきたい。
意見4.②
該当箇所
(第二十二次中間とりまとめ(案) P45)
⑥リクワイアメント・ペナルティ等
意見
自主的安全性向上の対策の実施により供給力提供開始の遅延(供給力提供開始期限の超過)が発生する場合、容量契約確保金額を容量収入として得られる期間を短縮しないでいただきたい。
理由
- 原子力利用は、安全性の確保が大前提であり、事業者は、規制基準に適合することにとどまらず、常に安全性の高みを目指した取り組みを継続していくことが求められている。
- 現行制度では、自主的な安全性向上対策に関する供給力提供開始の遅延が発生する場合、ペナルティとして、容量契約確保金額を容量収入として得られる期間が短縮される。
- 自主的安全性向上に伴う遅延をペナルティ適用から除外し、事業者やサプライチェーンからの自主的安全性向上に対する新たな提案や取組みの実施が積極的に起こるような制度にしていただきたい。
意見4.③
該当箇所
(第二十二次中間とりまとめ(案) P45)
⑥リクワイアメント・ペナルティ等
意見
自主的安全性向上の対策の実施による長期停止には、供給力の維持ペナルティを課さないでいただきたい。
理由
- 原子力利用は、安全性の確保が大前提であり、事業者は、規制基準に適合することにとどまらず、常に安全性の高みを目指した取り組みを継続していくことが求められている。
- 自主的な安全性向上対策にかかる供給力提供開始の遅延発生が発生する場合、供給力の維持ペナルティを課さないでいただきたい。具体的には、長期停止期間は停止の上限180日相当にはカウントしないでいただきたい。
- 自主的安全性向上に伴う停止をペナルティ適用から除外し、事業者やサプライチェーンからの自主的安全性向上に対する新たな提案や取組みの実施が積極的に起こるような制度にしていただきたい。
意見5①
該当箇所
(第二十二次中間とりまとめ(案) P49)
⑦投資回収の仕組み
意見
資金調達コスト低減、電気料金の低減の観点から、建設期間中から投資回収できる仕組みを導入していただきたい。
理由
- 建設リードタイムが長く、高額の投資が必要な電源については、建設期間中から投資回収できる仕組みを導入することで、資金調達コストが軽減され、ひいては電気料金の低減につながる。
お問い合わせ先:企画部 TEL:03-6256-9316(直通)