カナダ:英国と民生用原子力協力強化で覚書、英国の新設計画と余剰プル処分に協力へ

2015年6月30日

 カナダ政府は6月29日、同国の天然資源省(NRCan)が英国のエネルギー気候変動省(DECC)と民生用原子力分野の協力を強化する了解覚書に調印したと発表した。2014年に両国首相が改定共同宣言で誓約した両国間の原子力協力強化を継承するもので、英国で成長しつつある原子力市場においてカナダの原子力産業も事業チャンスを得られるよう支援するのが目的。また、英国の余剰プルトニウム(PU)燃焼処分にカナダ型・加圧重水炉(CANDU炉)を使用する選択肢について英原子力デコミッショニング機構(NDA)が実施中のフィージビリティ・スタディに関しても、同覚書を通じて作業が促進されるとともに、代替核燃料による発電を評価する枠組が構築されるとしている。

 英国では16基の原子炉で総発電電力量の約18%を賄っているが、このうち15基までが2023年までに設計寿命を終えるため、政府はエネルギー供給保証とCO2排出量削減の一手段として原子力発電を優先的に開発。既存炉をリプレースする1,600万kWの発電設備として、2030年までに少なくとも12基の建設が必要と原子力産業戦略に明記している。今回の覚書はこのような市場から、中小企業を含めて両国の原子力産業界の様々な関係者が恩恵を得ることを狙ったもので、産業界同士の連携強化に資するだけでなく、研究所や大学の研究ネットワーク間で共同作業が促進されると説明した。

CANDUエナジー社は覚書を歓迎
 ちょうど同じ日、カナダ原子力産業機構(OCI)がロンドンで英国の原子力サプライヤー・チェーンに対し、CANDU炉で英国の余剰PUと回収ウランを燃焼する「CANMOXアプローチ」を提案していたことから、CANDUエナジー社は今回の覚書がこうしたアプローチの採用に道を拓くとして歓迎。NDAが2014年1月に国内PUの管理計画に関する状況報告書を公表した際、PUはMOX燃料に転換して軽水炉での再利用が望ましいとした一方、同社製「改良型CANDU6(EC6)」、およびGE日立ニュークリア・エナジー社製「PRISM高速炉」で再利用する代替案についても技術的調査を進めるとしていた点に言及した。

 CANDUエナジー社によると、今回の覚書で両国が関係強化を目指している分野は、(1)ウラン供給、(2)原子炉の設計・建設・運転・廃止措置、(3)余剰核物質を安全かつ適切に処分する代替燃料サイクルや新型燃料サイクルの構築--など。これらの分野で両国の共同研究開発や規制協力、英国原子力部門への技術移転と投資が活性化される。これに対してカナダのCANMOXアプローチでは、出力70万kWの第3世代設計であるEC6を4基建設することや、これらに装荷するMOX燃料の製造工場建設を盛り込んでおり、余剰PUをすべて燃焼した後は運転寿命の60年に達するまで英国の50万世帯に約300万kWの低炭素電力を供給する発電炉として役立つと強調している。