ドイツの再生エネ事業者など10社が英ヒンクリーポイント建設計画で法的措置へ

2015年7月6日

 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は昨年10月、英国ヒンクリーポイントC原子力発電所(HPC)建設計画に対する同国政府の財政支援策はEU競争法における国家補助には当たらないとの判断を下したが、その取り消しを求めるドイツの再生可能エネルギー事業者2社と8都市の市営電気事業者が7月2日、EUの司法裁判所に共同提訴するとの方針を明らかにした。HPC計画への政府支援が突破口となって欧州の原子力発電開発が促進されることを牽制する狙いがあるが、この件については反原子力の立場を取るオーストリア連邦首相府も同様の方針を表明した模様で、事業者のEDFエナジー社がHPC計画について下す最終投資決定への影響が懸念されている。

 グリーンピース・エネルギー社を始めとする10社連合の主張は、ECがHPC計画を承認したことによりドイツで行われている環境に優しい発電の市場に重大な悪影響が及ぶ可能性があるというもの。英国政府の原子力開発支援モデルが受け入れられれば、欧州で原子力発電施設の建設を計画するポーランドやチェコ、ハンガリーからも同様の支援策に向けた強力なシグナルが発せられていることもあり、ドイツで市営電力が行っている再生可能エネルギーと熱電併給開発への経済投資活動に長期的なマイナス影響を及ぼす。また、ドイツが進める再生可能エネルギーへの移行政策にも先行きの見通しは暗いという印象を与えかねないとした。

 この件について実施した最新の調査も、この懸念を実証する結果になったと10社連合は指摘。現在EU加盟国6か国で計画されている原子力発電所建設計画が高額の補助を受ければ、ドイツの電力卸売価格は11.8%下落する可能性がある。原子力発電による1MWh辺りの取引価格は5.7ユーロ(約770円)下がり、再生可能エネルギー事業者は大幅な競争上の不利益を被ることになると訴えている。