原産協会:日台原子力専門家会合を開催

2015年7月28日

約60名が参加する盛況ぶりとなった専門家会合(=壇上は開会挨拶を行う高橋明男原産理事長)

約60名が参加する盛況ぶりとなった専門家会合(=壇上は開会挨拶を行う高橋明男原産理事長)

 原産協会は7月27日、台湾の原子能委員会や核能研究所、台湾電力などの専門家を交えた日台双方の原子力関係者による情報交換会合を都内で開催した。台湾は中国による国際原子力機関(IAEA)や核不拡散(NPT)条約への加盟を機にこれらからの脱退を余儀なくされ、それ以降、日台の原子力交流は民間レベルのものが主流。特に原産協会は1986年以来、台湾側との共催で毎年「日台原子力安全セミナー」を開催するなど、 日台関係者間の相互理解と交流を深める上で大きな役割を果たしてきた。こうした中で、日本の原子力規制委員会と台湾原子能委員会の協議に基づき、日本の対台湾窓口機関である(公財)交流協会と台湾の亜東関係協会は昨年11月に「日台原子力安全規制情報交換覚書」を締結。今年から「日台原子力規制情報交換会議」が開催されることになった。今回の専門家会合では、その第1回会合に出席するため来日した台湾の専門家達を迎え、福島第一発電所事故後の対策等、原子力安全向上に資する日台双方の取り組みについて、情報共有と意見交換を行ったもの。

日本の原子炉再稼働への動き、台湾側の「励み」に
日台 藩 中華民国核能学会の潘欽理事長(=左写真)は、台湾が直面している原子力開発上の課題と今後の展望について説明した。台湾では福島第一事故後、既存の原子炉6基に40年の運転期間を設定し、段階的に廃止していくこと、建設中の第4(龍門)原子力発電所については1号機を運転前安全検査の後に密閉停止、2号機でも建設の凍結を決定。両炉の扱いについては国民投票で決まるが、来年には総統選挙が行われることもあり、今後少なくとも3年間は台湾の原子力にとって最も課題の多い年になるとした。しかし、翻って日本では、全基停止していた原子炉が徐々に規制委の適合性審査をクリアするなど、近い将来に商業運転再開が見込まれる点に言及。これが台湾にとっても、既存炉の運転期間延長の可能性や第4発電所の再スタートに向けた良いモデルになるとの期待を示した。

 同理事長によると、台湾では現在、3サイトのBWR(4基)とPWR(2基)で総発電電力量の約19%を供給している。運転実績は良好で、報告の必要な事象件数は年々減少。特に過去5年間に年間の計画外自動停止回数が0~4回以内に収まっている。年平均設備利用率も非常に高く、2007年に出力を増強した後は約90%を維持。IAEAの統計ランキングでも上位に位置している。安全確保については福島第一事故後に安全委員会が2段階の総点検実施を指示し、全電源喪失への対処や地震・津波対策、使用済み燃料プール冷却など8つの追加要件を提示した。これらに積極的に対応するため、台湾電力は欧州基準に基づくストレステストを各発電所で実施するとともに、10年毎の総合安全評価を繰り上げ実施。設計外事象対策として海水による原子炉冷却を含めた究極対応ガイドラインを発電所毎に設定した。こうした活動により台湾の原子力発電所の安全性はかつてないレベルに向上している。

 このような状況を踏まえた上で潘理事長は、台湾の原子力発電が直面する最大の課題は一般大衆にいかに受け入れられるかという点だと言明。それには、(1)さらなる安全性向上により福島第一事故の落とした影を払拭、(2)低レベル放射性廃棄物の最終処分サイトを早急に確定、(3)使用済み燃料の適切な管理、(4)情報公開と透明性に配慮--などが必要だと指摘した。その上で、台湾の原子力には今後も発展のチャンスはあると強調。理由として、エネルギー資源に乏しい台湾で原子力は準国産エネルギーとなり得るほか、国際的なCO2排出抑制目標を台湾が達成するための重要手段であること、台湾の原子力発電所の安全性能は高く、台湾電力の究極対応ガイドラインは米国のBWR所有者グループ(BWROG)から承認を受けつつあること、次世代の原子力技術により台湾で貯蔵中の使用済み燃料も貴重な国産エネルギー源になり得ること、などを挙げている。